東京・渋谷から、岡山の中山間地に移住です。作るのは「服」。

かつて有名アーティストのCDジャケットやライブ衣装などのスタイリングも手掛けた女性が、岡山に移住して新たな服のブランドを立ち上げました。服に乗せて「ドキドキ」や「ワクワク」を届けたい…女性の思いに迫りました。

デザインから縫製まですべて手作業で行う、服飾作家・枝光理江さんです。

(枝光理江さん)「服が出来上がったときはうれしい。愛着があります。ひとつずつ作っているから」

枝光さんは神奈川県出身で、28歳から約5年間東京でスタイリストとして活動。
雑誌や広告で使う衣装のほか、歌手のYUKIさんのCDジャケットの衣装なども手がけました。

(枝光理江さん)「シングルCDだったかな。楽しかった、着てもらえると。イメージして『こういうのがいいだろうな』と思って持っていくとYUKIさんのパワーがすごいから着てもらうと、やっぱりすごく可愛いと思って」

そんな枝光さん、いまは岡山市の中山間地で自然に囲まれ暮らしています。この場所で2年前に新たな服のブランドを立ち上げました。

(枝光理江さん)「岡山の生活では『機能的な服』ばかり着ているから、それにちょっと合わせる服を作ることが多くなっているし、着たい服はあるけれどその出番がぜんぜんない生活」
「それでも自分を喜ばせたりウキウキさせたりとか、毎日幸せの方がいいと思って、普段からワクワクを増やしたくて『シンプルだけどちょっとないもの』を」

エプロンやケープなど、暮らしの中で着る服にワンポイントとして合わせられるものを中心に、自分の心がワクワクするアイテムを作っています。

17年ほど前から始めた服作りですが、岡山に来て気持ちや考えに変化が生まれたと言います。

(枝光理江さん)「東京にいたときは自然とかを『情報』として知っていて「岡山に来たら『自然の力に圧倒される』というか。おおらかに『いいな』と思ったことを淡々とやることに満たされています」

枝光さんの夫・哲也さんも同じファッションの道を歩んでいます。2001年に立ち上げた自身のブランドで東京コレクションなどに出品してきた経歴を持つなど、第一線で活躍するデザイナーです。

先に服作りをしていた哲也さん。枝光さんの制作をサポートしながら、枝光さんの移住後の変化を一番近くで見てきました。

(夫・デザイナー 哲也さん)「理江さんの服は、東京にいるときよりもより自由な感じはします。僕のやりたいことや表現方法とちょっと違ったりするので自分の幅が広がるのもあるし、すごく刺激は受けます」

枝光さん一家は、東京・渋谷区に服作りと生活の拠点を置いていましたが、「自然の中で育児をしたい」と、2011年の東日本大震災を機に岡山に移住してきました。

岡山で暮らして12年。服作りの面だけでなく、生活自体も変わりました。

(枝光理江さん)「このお米も近所の人のを分けてもらって。この野菜はけさ、近所のおじさんがくれた」

服づくりのアイデアは、日々の何気ない時間にふと思いつくと言います。岡山での生活に直結したアイテムも生まれました。

(枝光理江さん)「こういうのは、岡山で畑とか外仕事をしているからつくったもの。『ホッカムリ』をしたら田園に溶け込めるファッションになる」

日常のアクセントとなるオシャレを生み出す枝光さん。服づくりで大事にしていることがあるといいます。

(枝光理江さん)
「この服は『これがかわいいからこうしてあげよう』とか、『これ可愛い』『いいじゃん、きょう』と思うことがあり、『気』って伝わるんだなと思ったことがある」
「『目に見えないもの』とか『言葉じゃないもの』。だから自分が心地よい状態で服をつくったら、それは誰かにとっても良いものになるんじゃないかと思っている」

「心地よい」岡山の生活から生まれた服たちが、届いた人に「心地よさ」を伝えてくれたらと願いを込めます。

(枝光理江さん)
「服を通して『気持ちいい』『嬉しい』『ワクワクする』という嬉しい作用を自分が感じるから、だれかにもそれを感じてもらえるようなものを作っていたい」

暮らしに溶け込む感情を大切にしながら服をつくる枝光さん。自然豊かな岡山の地から、日常で身に着けられるトキメキを届けます。