岡山県倉敷市に残る、洋画家・児島虎次郎のアトリエで、アーティストが作品制作に取り組んでいます。「大原美術館による若手作家支援の一環」で、歴史と自然あふれた環境が想像力を刺激しています。

倉敷市の大原美術館の名画を収集した画家・児島虎次郎。

今、かつて虎次郎が使用していたアトリエに、兵庫県在住の画家・谷原菜摘子さんが滞在し、作品制作に没頭しています。「大原美術館による若手作家の支援事業」として企画され、谷原さんは今年4月から3か月間滞在して、作品に取り組むと言います。

(画家・谷原菜摘子さん)
「自分の作品の世界観って古代の話なんですけれど、でも古代の話を正確に描くのではなく、自分のカラーに染めなければいけないので、昔の洋服とかも参考にしつつ、自分の美的価値観を採り入れたりとか、あとキャラクターの設定とかですかね」

アトリエがあるのは、児島虎次郎が晩年を過ごした無為村荘(むいそんそう)です。およそ2千坪の敷地には、和風建築に西洋の装飾を施した「無為堂」や、100年前に作られたサウナといわれる「聖壽無彊(せいじゅむきょう)」などがあり、歴史と自然のあふれる空間で制作に取り組めるといいます。

(画家・谷原菜摘子さん)
「最初は少しプレッシャーも感じましたし、縮こまってたんですけども、やっぱり1週間、2週間経つとどんどん児島虎次郎のアトリエと仲良くなれた気がしまして。自然に囲まれた場所で自分の制作にひたすら集中できて、1日12~13時間かけてひたすら絵を描くということは、画家の人生の中でもなかなかない経験だと思うので本当によかったです」

白いキャンバスではなく、黒いベルベッドに描かれる谷原さんの作品。制作中の作品は「竹取物語」をモチーフに、岡山県の史跡を訪ねて触発された吉備津彦命(きびつひこのみこと)と温羅(うら)の戦いなどを盛り込みました。緻密な筆遣いで、美しさや残酷さを表現しています。

(画家・谷原菜摘子さん)
「竹取物語と言っているんですけど、実際にはきっとみなさん『どこが竹取なんだ』と思うと思うんですよね。モチーフひとつひとつの意味とか、なんかできるだけ素通りするのではなく、これは何だろうとか、これどんな意味があるんだろうとか、これらは次の場面にどんなふうにかかわってくるんだろうって、みんなぜひ疑問に思いながら見ていただければ私はうれしいです」

児島虎次郎のアトリエで滞在・制作した谷原さんの作品は、7月11日から9月24日まで大原美術館に展示されます。