競馬やパチンコなどにのめり込み、自分の意思でやめられなくなる「ギャンブル依存症」。専門家は「誰でもなりうる病気」と指摘しています。当事者、そして家族がその苦しみをカメラの前で話してくれました。

「競馬で借金が1500万円くらい」

■「車が追突して、死ねたら」 競馬にのめり込んだ男性


(ギャンブル依存症と闘う石沼さん〈仮名〉)
「2年ちょっとの間で、競馬で借金が1500万円くらい。ギャンブルでした。『借金はギャンブルでしか取り戻せないだろう』という風に思い込んでいたというのはあります。辛かったですね。」
「もう起きてすぐ考えるのが、返済をどうしようかな。車が追突してくれないかなとか。死にたい。そういうことは思っていましたね」

34歳の会社員、石沼さん(仮名)。多額の借金を返済しながら、現在もギャンブル依存症と闘っています。きっかけは8年前に興味本位で始めた競馬でした。

手帳には、一日で負けた万単位の金額が…


手帳に記された「5万負け」「8万負け」「30万負け」の文字。一度に200万円を賭けたこともありました。

数回引き当てた”万馬券”が沼にはまった要因。借りた金は1000万円を超え、ついには母親の財布からも金を抜くようになっていました。

(石沼さん〈仮名〉)
「『勝ちゃあ、そこに戻せばいいだけ』という風に思ってやっていたら、やっぱりばれてしまって。母親はすごい泣いていましたし、自分でもやっちゃいけないなと思ったんですけど、一日経ったりしたら、またこう『ギャンブルしたいな』というか、気が付いたらしていました。する準備をもうしていましたね」

■依存症の疑いのある人は全国に約70万人

コロナ禍の巣ごもりで、その数は更に増えているとも


ギャンブルにのめり込み、衝動を抑えられなくなるギャンブル依存症。厚生労働省は、4年前の調査で依存症の疑いのある人は全国に約70万人いると推計。コロナ禍の巣ごもりでさらにその数は増えていると言われています。

不安傾向が強くなり、自殺に追い込まれるケースもある「病気」です。専門家は「誰でも罹る可能性がある」と指摘します。

専門家は「誰でもかかる可能性がある」と指摘


(岡山県精神科医療センター 橋本望医師)
「ギャンブルで大勝ちした時に『高揚感』を感じるんですけど、その時に『ドーパミン』という物質が放出されます。」
「強いドーパミンが一杯出ると、生き物にとって大事なものと認識して、少しずつ価値観が変わってくる。それが続けば、ギャンブルに関連する情報を見ただけで、実は脳が反応します。」

「ギャンブル依存症は脳の病気」というのが世界的に標準的な考え方


「勝ってドーパミンが出て嬉しかったはずのものが、『これからギャンブルをするぞ』と連想しただけで、もう脳が勝った時の状態になっているんですね。ですので、止めるということ、そういう発想にもならないです。脳の病気という考え方が、世界的に標準的な考え方になっています。強調したいのは、どんな方でもなり得るものだということです」

問題は、患者や家族がその病気に気づかないケースが多いということです。国内で依存症の疑いがある人が推計で約70万人であるのに対し、実際に医療機関で治療を受けているのは年間3000人ほどしかいません。

(岡山県精神科医療センター 橋本望医師)
「どう対応していたらいいのか分からなくて、葛藤される家族は多いです。親戚とかに相談しても『離婚しなさい』とか簡単に言われるんですけど、そんな心は簡単ではないので」