ワンオペで産卵・子育て・巣作り・・・さあどうなる?

「最初の働き蜂(娘)が羽化するまでは孤独な奮闘が続きます。

やがて一生懸命育てた最初の少し小さなお母さんそっくりの娘が羽化すると、女王は次第に産卵に専念し、娘たちは妹の世話や巣作りを手伝います。

娘たちが妹を育て、さらに家族を増やすことで、巣はどんどん大家族に。

何事もなければ今の時期までに数百匹規模の立派な巣になり、来年の女王になる娘や、結婚のための息子が次々と生まれてきて、次第に働き蜂の数は減り、巣の主役は来年の女王になる娘と結婚のための息子たちへと移っていきます。

そして、この主役たちは、女王とわずかな働き蜂を残して文字通り巣立っていき、二度と里帰りしてくることはなく、命のバトンをつないだ実家である巣は冬を前に一生を終えます」

巣もないのに集まるハチは帰宅難民?

ーでは今回のように、巣もないのに集まっているのはなぜでしょうか。

「これは、不慮の事故で帰る巣を失ったか、あるいは天敵に襲われて巣を占領されてしまった群れ。命からがら逃げ出し、路頭に迷う帰宅難民のような姿なのです。

アシナガバチの巣は女王が『ここだ!』と選んだ場所に作られるため、それなりに頑丈ですが、外的要因には勝てません。

強風や豪雨で落下する、人間のいたずらや駆除で壊される、スズメバチや他のアシナガバチに襲われて陥落する…こうして巣は失われます。

我が家と幼虫を失った彼女たちは、ただ集まるしかなくなります。結果として『巣もないのに集団で群がる』姿になるのです。

まさに、一時的な避難所で再会した家族が呆然と立ち尽くしているかのようです。本来ならこの時期は巣がもっともにぎやかな最盛期。

幼虫もたくさん育っており、働き蜂たちは餌をせっせと運んでいる頃です。写真のようにそれが一瞬で消えた群れは、文字通り途方に暮れていることでしょう」