発達障害と視野が狭くなる難病を抱えながら、色彩豊かな祈りの仏画を描く北九州市出身の画家・本村卓空(もとむら・たっくう)さんが、10月10日から岡山で個展を開きます。かろうじて残る視力で書き上げた作品には「こころ安らぐ絵」として多くのファンを魅了している本村さんですが、両親との突然の悲しい別れを経験するなど、大きな悲しみを乗り越えて作品を描き続けています。

ぎりぎり見えるくらいの視野しか残っていない「卓空の世界 祈り」 

本村卓空さん(41)は1982年北九州市に生まれ、幼いころから意思疎通が苦手で、その後、自閉症と診断されました。また、視野が狭くなる進行性の難病・網膜色素変性症を患い、今では 視野の96%を失っているといいます。針の穴に糸を通すところがぎりぎり見えるくらいの視野しか残っていません。

もともと絵を描くことは好きだった卓空さんは、誰から教えられるわけでもなく、神仏の絵を描き始め、2011年ごろから本格的に制作活動を始めました。父親の哲也さんは 「人と話さず、目もほとんど見えませんが、何かに救いを求めるように、 仏の姿を描き続けているように感じる」と話しています。

卓空さんは、2015年12月5日、初の作品集「画集・卓空の世界 祈り」を出版しました。仏画やキリスト教の聖人などを描いた卓空さんの作品47点と、母親の照美さん(出版された本での名前は照香さん)の俳旬が併せて掲載されている「母子のコラボ本」です。本の出版記念を兼ねた個展も東京で開催されることになりました。母親の照美さんは「完全に失明してしまう前に、少しでも多くの人に絵を見てもらい、卓空の世界観を感じてほしい」と話していました。

しかし、思いがけない出来事が起こります。

この本が出版された8日後、俳句の会合で大阪に行っていた母親の照美さんが就寝中にホテルで突然亡くなったのです。心臓が止まる突然死でした。

卓空さんは母が旅立ったことで塞ぎ込んだような様子でしたが、 筆を休めることなく絵に向き合い続け、父親と個展の準備を進めていきました。父・哲也さんも「妻が『同じ病気に悩む人たちを励ましたい』と語っていたので、とにかく多くの人に足を運んでもらい作品を見てもらおう」と、悲しみをこらえ個展の準備を進めていきました。

年が明けて2016年1月に開かれた東京での個展。約2500人の来場者が訪れ成功を収めました。