コロナ禍を経て、久しぶりのにぎわいを見せる今年の夏休み。今シーズンいっぱいで引退する「SL人吉」も多くの人を集めています。
「SL人吉」にとって最後の夏です。

熊本駅と佐賀の鳥栖駅を結ぶJR九州の「SL人吉」。現役で走る日本最古の蒸気機関車です。まるでタイムスリップしたようなクラシカルなデザインは多くの人を魅了してきました。
夏休みシーズンを迎えた先週の週末。熊本駅のホームに大勢の人が。その視線の先には…汽笛を鳴らしながらSL人吉が姿を現しました。

ただ、この光景を見られるのも、残りわずかとなりました。
運転士/機関助手 辻間徹さん「来年3月23日に引退する予定です」

車両の老朽化などから、SL人吉は来年3月、その長い歴史に幕を閉じます。
長崎から来たファン「めちゃくちゃ悲しい」
菊陽町から来たファン「SL人吉には精一杯の(感謝の)気持ちがあります」

記者「ラストシーズンの夏休み。約130人の乗客が出発を今か今かと待っています」
たくさんの人でにぎわう車内。この日の乗車チケットは販売開始から数日で完売したといいます。

そんな乗客たちを魅了するのがSL人吉の「顔」、蒸気機関車の「58654号機」です。
長崎から来た男の子もその姿に大興奮。
「やっぱりかっこいい、いつ見ても」

「58654号機」は1922年に製造され、去年100歳に。2009年から「SL人吉」として、熊本-人吉間で活躍してきました。
しかし、3年前の7月豪雨で肥薩線が被災。運行を再開した2021年からは熊本と鳥栖の間で運行しています。

「東京に行くときに夜行列車で随分(SLに)乗った経験はあります」
東京への旅路で、よくSLに乗っていたという女性。蒸気機関車ならではの「これ」が昔を思い出させたそう。
「煙の匂いが結構懐かしいですね」

さらに、中にはこんな熱心なファンも…チケットホルダーを見せながら。
中国から来たファン「(SL好きなんですか?)はい、鉄道が好きです」

これまでの乗車チケットを大切に保管していた男性。車両の写真を撮るのが趣味で、この日はSL人吉に乗るために中国からやってきました。
「めっちゃ楽しいです。とても幸せです」

それぞれの思いを乗せて、列車は鳥栖へと向かいます。
乗客
「楽しい!(どんなところが楽しい?)全部!(景色とかどうだった?)凄かった!」
「良いです、最高です」
「中が綺麗でびっくりした。ビール飲みながら。(ビール飲みながら最高ですね!)はい!」

そして、約2時間40分の旅を終え、終点の鳥栖駅へ到着。
乗客
「良かったです。良い思い出になりました」
「楽しかった」
「せっかくこういう良いのがあるから、勿体ないなって思っています」
「SLはこの先もずっと一生走っててほしいですね」

2009年からの13年間で、のべ37万人を乗せた「SL人吉」。運転手で機関助手の辻間さんもその思いはひとしおのようです。
辻間さん「乗客に感動を与えられるように走ろうと思います。引退した後は『お疲れさま』と声をかけたいと思います」

来年度以降の車両の保管先はまだ決まっていないとのこと。
引退まで残り8か月。たくさんの夢と希望を乗せて駆け抜けます。
