新型コロナウイルスの5類引き下げ以降、経済活動も徐々に回復してきた一方で、熊本市中心部のテナント需要にはある異変が起きています。
『テナント募集』という看板をよく見かけるが…
記者「熊本市中心部のアーケード街です。平日ですけど、人通り多いですね~」
新型コロナの5類移行後、人の流れが増え、活気が戻りつつある熊本市の中心市街地。

一方で、目立つのが・・・
記者「新市街アーケードでは、このように『テナント募集』という看板をよく見かけるようになっています」

40代デザイン関係「テナントは間違いなく減ってますよね」
記者「空き店舗が増えたなとも感じる?」
40代デザイン関係「はい、感じますね」

20代学生「1年間別の場所にいて久々帰ってきて、それはすごい実感する面が多いですね。寂しいですね。特に新市街とか寂しいイメージ」

コロナ禍に比べて人通りは増えてきているのに、なぜ空テナントが多いのか?!
不動産を管理する会社に現状を聞いてみました。
美創 髙下祐一 課長「去年に比べると、空き店舗の数は減っている」

街中の人たちの印象に反して、実は「空き店舗の数は減っている」という答え。
熊本市の調査でも、中心市街地の空テナント数は、2022年8月の582件をピークに減少傾向になっています。
*資料
2019年春頃302件
2020年8月486件
2021年8月533件
2022年8月582件(最多)
2023年5月514件(最新)

では、なぜ空き店舗が増えたように感じるのでしょうか?
髙下 課長「大型店だったりアーケード沿いの目立つ大きな店舗というのは、非常に賃料も高いので、借りる企業の動きがまだ鈍っているところもあってそういったところが空いていることから、空き店舗が目立つようなイメージになっていると思います」

その一方で物件の需要には変化も
髙下 課長「10坪や15坪くらいの小さな店舗の問い合わせが非常に多くて、逆に物件が足りないという状況にもなっている」
下通に先月オープンした干物専門の飲食店です。
10種類以上の干物を中心に昼は定食、夜は居酒屋メニューを提供しています。
店の経営者・田口勝さん。福岡などで飲食業のコンサルティング会社を経営していましたが、3年ほど前から自分の店を持ちたいと考えていました。

そんな田口さんはこのタイミングで、熊本市の中心部に出店した理由のひとつをこう語ります。
干物キッチン本店 田口勝さん「賃料が安くなってきたというところもあり、非常に入りやすいということで今回入らせていただきました」

これに伴い、田口さんのように熊本市中心部で個人で新たな店を始めるケースも増えました。
田口さん「街なかを見てみると、空き店舗がかなり見られたということもあり、『ちょっとでも明かりを灯して元気にしていきたい』という思いで開店しました」
返済と物価高で資金繰りが…
ただ、街の新陳代謝が見られる一方で、飲食業にとってはまだまだ厳しいデータも。
東京商工リサーチ 熊本支店 甲斐伸一郎さん「コロナ発生以降、飲食業の倒産は非常に少なかったのですが、2023年の6月は14件中7件の(飲食業での)企業倒産が発生しました」

「コロナ後倒産」ともいえるこの数字。
コロナ禍で実施されていた国の支援策も終わり、事業者にとっては正念場です。
甲斐さん「返済の猶予期間が終わり、返済が始まることに対して資金ぐりが悪くなったとか、物価高による仕入高で薄利が続いて、資金繰りに支障をきたしてとかそういうところが要因で事業破綻に至ることが今後でてくるのかなと思います」

景気の動向と強く結びつくテナント事情。
目立つ「寂しさ」を「活気」につなげるためにも、街にも変化が求められています。









