100年以上前にも実例が
文法的に説明がつくとしても、ここ最近になって広まった、新しい表現なのでしょうか。
飯間さん「明治時代の雑誌『團團珍聞(まるまるちんぶん)』(1904年1月1日号)の中に、『新年明けましてお芽出度(めでた)いです』という表現が出てきます。 つまり、この言い方は最近の若い人が言い出したことではなく、遅くとも100年以上前から普通に使われてきたのです」
この語法は、飯間さんが編集に携わる『三省堂国語辞典』でも解説されるなど、日本語学の研究者の間では一般に知られているといいます。
ではなぜ、このような表現が生まれたのか。
飯間さんは「『水を沸かした結果お湯になる』という長い表現を短く言おうとして『お湯が沸く』になったと説明できる」と話します。 日本語を使う人が、その場その場で簡単に言いたいという気持ちが働いた結果、「新年 明けまして おめでとうございます」という表現が定着したという分析です。
つまりは、筆者が想像するに、頭の中では「2025年(旧年)が明けて、2026年(新年)になりました。おめでたいですね」と順を追って理解しているものの、表現としては「新年 明けまして おめでとうございます」になり、果ては「あけおめ」とまで縮まった。
「了解」がSNSで「り」と短縮して使われるように、数年後には「あけおめ」も「あ」の一文字で済まされる日が来るかもしれません。
「お互い様」の精神で
最後に、飯間さんは言葉との向き合い方についてこうアドバイスをくれました。
飯間さん「『新年 明けまして……』の例でわかるように、言葉にはそれぞれ使われる理由があります。『この言い方は変ではないか』と過度に気にする必要はありません。それに、言葉は『お互い様』です。誰から見ても完璧な表現というものはないんです。相手を傷つけない範囲で、おおらかに言葉を使っていいのではないでしょうか」
正しさを気にしてモヤモヤするより、相手を祝う気持ちを大切にしたいものです。今度のお正月は飯間さんの言う「お互い様」の精神で、晴れやかな気持ちで「新年明けましておめでとう」と挨拶を交わせそうです。












