「画面の向こうには、自分と同じように命を持った人間がいる」
池袋暴走事故で妻と娘を亡くした松永拓也さんは、「SNS中傷を繰り返さないために」と題したシンポジウムで、70人の参加者に訴えました。
便利なコミュニケーションツールであるSNSが、時に"デジタル暴力"の場となり、多くの人を傷つけています。事件・事故で家族を失った遺族をさらに苦しめた二次被害の現実について考えます。
「お父さんは死なないで」
2019年4月、東京・池袋で当時87歳のドライバーが運転する車にはねられ、松永さんの妻・真菜さん(当時31歳)と長女・莉子ちゃん(当時3歳)が亡くなりました。

松永さんが最初に語ったのは、家族との思い出です。お花見や海、温泉に行ったこと。父の日に、真菜さんと莉子ちゃんがケーキを作ってくれたこと。
あの日、玄関で「バイバイ」と別れ、正午ごろには「公園で遊んでいる」と電話で話したこと。
警察から電話がかかってきたのは、その2時間後の事でした。
松永さん「莉子が生まれた時に握りしめてくれた手と、硬く冷たくなった手がコントラストのように突きつけられて。あんなに尊いと思った命が終わってしまった」
絶望のあまりマンションの屋上から飛び降りようとした時、「お父さんは死なないで欲しい」という2人の声が聞こえたといいます。
松永さん「自分の姿を見て、誰かが『安全運転をしよう』と思うことができれば、いつか2人に『命を無駄にしなかったよ』言えるんじゃないか」
その思いから記者会見を開き、社会に向けて発信を始めました。