「おぉ、まっかっかだ!」

見たことありますか?これはコーヒーチェリーと呼ばれる「コーヒーの実」

「甘い!南国のフルーツの味がする。あ、豆が」

実の中から出てきたのは「種」この種に熱を加える「焙煎」をすると、馴染みのあるあの「コーヒー豆」になるのです。

コーヒーが栽培されているのは熊本県南阿蘇村。コーヒーの多くは赤道周辺の熱帯地域で栽培されていますが、ここは日本。しかも、南阿蘇は冬の寒さが厳しい所です。

 
後藤コーヒーファーム 後藤 至成さん
「直感的に感じたのは、コーヒー豆のネーミングはキリマンジャロとかブルーマウンテンとか山の名前が付いていますよね。高地で栽培されるということは、いくら赤道直下でもかなりの低い温度でも対応できているんだなと。そこが元々の原産地であれば阿蘇でも可能じゃないかと」


後藤さんは元高校教諭で農業を教えていました。44歳の時に赴任した阿蘇中央高校で、授業の一環としてコーヒー栽培を始めます。


その後、熊本地震が発生。
これまでの栽培の目的「地域の活性化」に「復興」の思いが加わりました。


退職後は土地を借りてコーヒー栽培を本格化しました。
後藤さんいわく、コーヒー栽培と教育は似ているところがあるとのこと。


後藤さん
「一番大事なのは、常に学校の場合には子どもと一緒にいる時間を長くして子どもの変化に気づくということ。植物の場合も常に植物を見ている時間を長くして、その変化に早く気づいて対応するという、これは一緒ですよね。そうすると必ずそれにこたえてくれるんですよね」


後藤さん
「うまい!最高!」


元高校教諭の後藤さんにとって、頼りになるのが教え子たち。この日は、トラクターを借りました。


教え子(農家) 橋本 凌さん
「良くも悪くも先生には見えない人でしたね」
後藤さん
「どういうことや」


橋本さん
「お世話しています」
後藤さん
「過去にお世話していました」


南阿蘇を代表する温泉旅館「青風荘(せいふうそう)」熊本地震とその後の大雨で大きく被災、2020年9月にようやく宿泊施設の再開にこぎつけました。


後藤さんにはある夢があります。

後藤さん
「本当にいいコーヒーを提供できる所が絶対欲しかった」


再建を果たした青風荘の一角で、自分の栽培したコーヒーの提供をしたいというもの。河津 拓さんは、後藤さんの教え子で青風荘の社長の息子です。

後藤さん
「先になるだろうけど、青風荘辺りに施設を造って、そこでコーヒーを栽培してそこで飲んでもらうっていう…それはもう最終目標かな」

教え子(地獄温泉青風荘)河津 拓さん
「すごいっす」
後藤さん
「すごくはないけど、面白いやろう?」

この夏、実家へ帰ってきた河津さん、実は福岡の学校と有名店で8年半コーヒーの勉強を積みました。


河津さん
「農業の高校に行ったんですけど、そこで後藤先生がコーヒー育て始めてて、僕自身もコーヒーに興味が元々あったので、コーヒーの勉強をしたいなと思って」

後藤さんが手にしているのは、自ら栽培したコーヒー豆。この日、河津さんが初めて後藤さんの豆でコーヒーを淹れてみることになりました。


河津さん
「緊張する…」


実家、そして地元のことを思い学んできたコーヒーの技術。恩師が阿蘇で育てた貴重なコーヒー豆でゆっくり、丁寧に一杯が淹れられていきます。


後藤さん
「違う違う、全然違う。さすがだ」


河津さん
「豆がいいんで」
後藤さん
「こんなに大事に淹れてもらったのは初めてだから、いいわ、深い」


河津さん 
「よかったです」
後藤さん
「1杯のコーヒーでこんなに幸せを味わえるとはな。夢に向かっていけるなという確信は感じました。でもまだまだです、とんでもないですよ」