畳表の原料「イ草」の生産量日本一の熊本。しかし今、産地では「絶滅危惧種」とまで呼ばれています。この現状を打破するため販路拡大の動きが。その先は東南アジア・タイです。
タイ・バンコクのセレクトショップで販売されたのは、熊本産の畳。

タイのセレクトショップ シナータン・ウッティベージさん
「特に紹介させて頂きたいのは、9月に入ってきた熊本産の畳です」

国内での消費が落ち込ろみピンチを迎えているイ草を何とかしたいと立ち上がったのは、八代出身の地域プロデューサー西田誠治(にしだ せいじ)さんです。
ヤム!ヤム!ソウルスープキッチン 西田 誠治さん
「イ草・畳というところに囲まれて成長してきたと、八代市に来てみて改めて感じていますが、そこをなくしたくないという思いが一番強い」

今、国内のイ草を取り巻く環境は厳しさを増しています。日本一のイ草の産地、八代平野。全国の生産量のおよそ9割を占めていますが…

イ草生産者 早川猛さん
「絶滅危惧種。もういずれは消滅する状態ですね」

熊本県によりますと、八代平野でのイ草の作付け面積は32年前と比べて9割以上減少。国内での需要の低下が響いていると見られています。
早川さん
「毎年1割ずつ減っています。農家数も生産面積ももうカウントダウンに入っているんです。おそらく右肩上がりで増えることはまずないです」
日本の文化を支えるイ草が消えるかもしれない。西田さんは故郷の特産を守りたいと、イ草の販路拡大に乗り出しました。
地域プロデューサーの西田さん、これまでも熊本地震の影響で地元での消費が落ち込んだ高森町の特産ツルノコイモを人気カフェでメニュー化するなど、苦境に立たされた地域の特産を盛り立ててきました。


今度は八代のイ草の可能性を広げるため、海外でも販売できる製品を地元企業と共に手掛けています。東南アジアでも受け入れられるよう畳のヘリのデザインを変えるなど戦略を練っています。

北川重義商店 北川 昌義 社長
「普段作っている畳表とは違う思い入れがあります」

そしてこの夏、これまでの仕事でつながりがあったタイで、開発したイ草製品を売り出しました。畳に触れることがほとんどなかったタイの人には、畳が「目新しいもの」として受け止められ上々の反応だったということです。

西田さん
「今は特に円安で、日本のものをリーズナブルに手に入れやすいという状況も追い風になっていると思う」
さらに、タイで県産イ草を使用した食品も販売しました。

西田さん
「パウダーを店舗でスイーツの原料として使ってますから、粉を使ったもので現地の人が受け入れやすいものに形を変えて食べて頂いている」

西田さんは、イ草パウダーを手掛ける地元企業にタイでの手応えを報告しました。
西田さん
「空間で癒すところと、身体の中から癒すところを両輪で合わせ持ってる凄いスーパー素材と紹介したら、驚きが強いと思いますが、そこで結構関心持ってくれて」
この企業もイ草を何とかしようとイ草食品の新商品を開発してきましたが、これまで思うような利益は出ていませんでした。

そんな中、西田さんから海外での販売を持ち掛けられ、これからの反転攻勢に期待が持てるようになったと言います。
イナダ 稲田 剛夫 社長
「外国に輸出ができると誰も思わなかったと思う。だけどそこまでやってくれた、西田さんがタイとの連携で。産地としてはとてもありがたいです。夢がある」

地元の特産・文化を守りたい。その思いは活動を続ける中で一層強くなっています。
西田さん
「日本の畳は日本の心だと思っています。それが最後の産地であれば、絶やしてはいけないと思います」