10月2日のジャニーズ事務所の記者会見に「指名NG」リスト=質問をさせない記者のリスト=があったことが判明した。事務所側は一切の関与を否定しているが、「この会見こそがジャニーズ問題の象徴だ」と元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんは受け止めている。6日に出演したRKBラジオ『立川生志 金サイト』で次のようにコメントした。
◆かつて「調査報道の鬼」と呼ばれた記者の怒り
まず大前提として、週刊誌の編集長だった私もジャニー氏の問題を耳にしながら追及しなかったどころか、所属タレントを表紙やインタビューなどで積極的に起用してきた一人として、“同じ穴のムジナ”というそしりは免れないと思っています。ただ、そのムジナの一匹だから見えることもあります。今回の記者会見のやり取りがまさにそうでした。
実は私、会見の模様は生中継ではなく、その後のニュース番組でしか見ていませんでした。なので、なぜ会見が紛糾したのかもよくわかっていなかったんです。その翌日、毎日新聞で「調査報道の鬼」と言われ、権力と戦い続けてきた先輩記者が私に連絡してきました。
「あの会見はひどい。なぜ、ジャニーズが勝手に設定した時間制限と一問一答の縛りを、当然のように受け入れたのか。しかも、質問をさせる記者とさせない記者を明らかに選別していたのに、それに異を唱えた記者に、事務所側が『子どもたちに恥ずかしいから、ルールを守ろう』と言って。さらに驚くべきは、それに拍手で賛同した記者が結構いたことだ。事務所もメディアも、何も変わっていない。かつてその輪の中にいた一人として、君もちゃんと考えろ」
なぜかその場にいなかった私が、えらい勢いで怒られました。
それで、帰ってすぐに会見の録画を最初から通しで見たんですが、確かに指摘通りだと思いました。その時点ではまだNGリストの存在はわかっていませんが、「明らかに記者を選別している」という指摘も当たっていたわけで、身内ながら慧眼だと思います。
逆に言うと、それを疑えなかった自分は、記者としての勘が鈍っているし、先輩に言わせれば「業界の毒がまだ抜けていない」のかもしれません。反省を込めて、あらためて私が会見から見えたことをお話しします。
◆「実利が伴う仲間意識」があの拍手を生んだ
突き詰めれば、それは拍手に象徴される仲間意識です。以前この番組でジャニーズ問題を取り上げたとき、私も所属タレントさんと個人的に知り合うと、彼らが尊敬の念を込めて面白おかしく話すジャニー喜多川氏の人物像に戸惑いながら、とても「あなたは何もされなかったのか」とは聞けなかったし、そう見ること自体が失礼だと感じた――とコメントしました。
私など、ほんの浅く短い付き合いですが、長年ジャニーズ事務所を担当してきた「ジャニ担」と呼ばれる人たちは、ほぼ身内でしょう。しかも、その付き合いには実利が伴います。サンデー毎日も表紙やインタビューを載せれば、時として売り上げが伸びましたが、写真集やカレンダーなどを出していたところは桁違いでしょうし、まして視聴率の1%に大金が動くテレビ業界にとって、人気の所属タレントをキャスティングできるかどうかは一大事です。
そのサジ加減を事務所が握っていたわけですから、はっきり言われなくても、その意を汲んだり忖度したりというのは、仕事熱心であればあるほど染みついたはずです。その結果として、脱退したメンバーを干したり、意に沿わない共演者を排除したりということが、いつの間にか暗黙のルールになっていった。だから今回、事務所側が時間や質問回数などを制限しても、その“ルール”をおかしいと思わなかったのではないか、と。あくまで私見ですが。
◆根強く残るタレントとメディアの仲間意識
また、金銭的利益とは直接関係ない記者やライターも、関係が良ければ取材を受けてもらえたり、時には特ダネをもらえたり。逆の立場になれば、接触すら拒まれるわけですから、構図は似たり寄ったりです。
もっとも、それは芸能取材に限ったことでなく、これも反省を込めて言いますが、警察や検察と言った当局取材も、官邸や役所、政治家などの取材も構図は同じで、記者は食い込むために力を尽くします。行き過ぎると、それは「癒着」と批判されるわけで、そうならないためには、どれだけ親しくても「書くべきことは書く」ことしかありません。
余談ながら、さっきお話しした先輩記者は、ある記者クラブのキャップ当時に「書く」ことを貫いた結果、キャップ在任中の大半、記者クラブへの「出入り禁止」を言い渡されて、部下と共に放浪した伝説の人です(笑)。
つまり、この会見で、特にあの拍手で図らずも露呈したのは、その関係性=事務所や所属タレントとメディアの仲間意識=は、今も根強く残っていて、そのサークルの外の人たちは共通の敵だということです。
事務所が後継の社長、副社長に所属タレントを選んだ背景には、そういう現実があると私は思います。特に井ノ原副社長は人柄が評価され、敵の少ない人物ですし、全く外部のプロ経営者が現れたら、その関係性は壊れてしまいますから。
付け加えれば、これは何もジャニーズ事務所に限ったことでなく、多かれ少なかれ、タレントに限らず、ほかの大手事務所との関係性でもあることです。例えば、あるキャスティングとバーターで事務所が若手を売り込み、その若手が人気になれば、また次の若手――という仕組みで大手の所属タレントが売れていく。だから才能も大手に集まる、という、ある意味、資本主義の弱肉強食が象徴的に表れる業界でもあります。
今回のことをきっかけに、そうしたすべてがクリアに整理されればいいのでしょうが、残念ながらそうはならないだろうというのが私の見立てです。







