◆唯一の「違憲状態」は、婚姻制度の“利益”を認めないこと


訴えの内容が憲法の複数の条項に違反しているという主張だったため、裁判所はそれらの一つ一つを検討した結果(回答)を示した。最後に登場したのが、憲法24条2項(個人の尊厳に立脚した家族法の制定)に違反するかどうかの判断だ。ここでは“違憲状態”という最も踏み込んだ表現が記される。

前半では主に「実現の在り方は、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきもの」と、同性婚は「世論次第」との考え方を前面に出した。そして次は世論分析における裁判所の“視点”が入る。「近時の未婚の者に対する意識調査も踏まえると、婚姻制度の目的において、婚姻相手との共同生活の保護という側面が強くなってきている」「我が国でも婚姻は異性のものという社会通念に疑義が示され、同性婚に対する国民の理解も相当程度浸透されている」

そして件の“違法状態”の指摘だ。

「同性婚に対する社会的承認がいまだ十分には得られていないとはいえ、国民の理解が相当程度浸透されていることに照らすと、本件諸規定の立法事実が相当程度変遷したものと言わざるを得ず、同性カップルに婚姻制度の利用によって得られる利益を一切認めず、自らの選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定はもはや個人の尊厳に立脚すべきものとする憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない」


◆「60歳以上は意見が拮抗」、「肯定的な意見は近時のこと」


最も踏み込んだ「違憲状態」の言葉が登場したその直後、「しかしながら」の表現が現れ、最終結論へと導かれる。(後述するが、「しかしながら」は判決の中で何度も何度も登場する)

「しかしながら、近時の調査によっても 20代や30代など若年層においては、同性婚又は同性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な意見が多数を占めるものの、60歳以上の年齢層においては肯定的な意見と否定的な意見が桔抗しており、国民意識として同性婚又は伺性愛者のカップルに対する法的保護に肯定的な意見が多くなったのは、比較的近時のことであると認められる。婚姻を認めていない本件諸規定が立法府たる国会の裁量権の範囲を逸脱した物として憲法に反するとまでは認めることができない」

そう、最終的には“時期尚早”というのが裁判体の考え方だ。とはいえ、弁護団は同じく「違憲状態」だった東京地裁の判決よりも、福岡地裁の判決はやや踏み込んでいると評価する。弁護士の一人は判決後にこう語った。

原告弁護士「いまの結婚制度をそのまま同性婚にもあてはめたら、いろいろ問題が生じてくる。別の制度を考える必要もある。だから立法府はどんな問題が生じていくのか検討をしていかなきゃいけないよね。と書いている。でもまだ、検討してないでしょ。だから立法府の検討と対応に委ねますと言っているように受け取れる」

判決全体を通して「到底看過できない」「看過しがたい不利益」「重大な不利益」などと現在の同性愛者がおかれている境遇を問題視する言葉が何度も繰り返された。そこには裁判体からの社会への問題提起、メッセージがにじんでいる。同性婚をめぐっては、5地裁の判決中、4地裁が違憲、または違憲状態とした。原告弁護士は「(国は)放置はできないと言われたと思う」と手応えを感じている。


原告・まさひろさん(35)「『しかし』と言われると、まだ言うの?って思って、結局「違反しない」と聞きすごく疲れました。一喜一憂しながら聞いていました。一刻も早い検討・議論を国会の場で進めていただきたいと強く思います」と述べ、裁判所を後にした。