約1年8か月にわたって休館していた福岡市博多区のスケートリンクが営業を再開しました。福岡市で唯一の常設リンクは累積赤字によって閉鎖が決まったものの、競技団体や市民の強い要望を受けて財源に道筋をつけ、生まれ変わりました。一般客の利用時間を少なくする代わりに競技団体の利用を促進。安定運営を目指します。



◆約20億円の累積赤字で閉鎖された


リニューアルオープンの日、氷上には華やかな白の衣装に身を包んだプロスケーター・安藤美姫さんの姿がありました。

福岡県・服部誠太郎知事「本当にたくさんの皆さんがこの施設の再開を待ち望んでいたんだなと」
西部ガスHD・道永幸典社長「感謝と安心感、安堵それが一番の気持ちですね」

式典の後に一般客に解放されると、リンクは多くの人の笑顔で溢れました。ただ、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。1991年に開業し「パピオアイスアリーナ」の名称で親しまれてきた福岡市唯一のスケートリンク。2009年に西部ガスグループが経営を引き継いで運営しましたが、コロナ禍の影響で利用客は大幅に減少しました。

西部ガス・道永幸典社長(2020年)「断腸の思いであるが、うち単独ではできない」

約20億円の累積赤字を圧縮できず、老朽化した設備の更新に5億円のコストがかかるとして西部ガスグループは施設の閉鎖を決めました。その影響は、様々な競技団体に及びました。



◆練習場所がなくなった選手たち


小学生の谷口朋葉さんはリンクが閉鎖している間、フィギュアスケートを習うため福岡県南部の久留米市まで通いました。

母・朋子さん「下の子を1人置いて送っていくこともできず1時間かけて車で行って拘束され大変でした。朝早くから夜遅くになることが多くて、帰ったらすぐ寝るという感じでした。車の中でご飯食べて、帰ってきてお風呂に入ってすぐに寝ると」

選手たちの練習の場を奪ってはいけない。競技団体は支援を求めてクラウドファンディングを実施。1950万円の募金が集まりました。また、西部ガスの要請を受けて福岡県と福岡市もそれぞれ改修費として1億2300万円を補助することを決めました。

リニューアルに向けた工事は去年10月に始まり、冷却システムが刷新されました。また、競技関係者の使用を想定した貸し会議室も設置され、利用しやすい環境が整いました。先月16日からは、一部の競技団体に施設が開放されています。

福岡フィギュアアカデミー・加来翔映さん(12)「とても滑りやすくてジャンプが少しうまくなったような感じ。練習しやすいので毎日来れるのでとてもうれしいです」


◆団体利用に注力、企業100社がバックアップへ


リニューアルしたスケートリンクは、一般客の利用を閉鎖前の半分の4時間半に短縮。料金は、靴代込みで大人は2000円、小学生以下は1200円です。また、これまでは合宿などの申し込みは受け付けていませんでしたが、事前予約があれば一般利用の時間帯でも貸し切りができるようになります。西部ガスの道永社長は、競技団体向けの利用拡大に加え、約100社の県内企業の力を借りながら安定した運営を目指します。

西部ガス・道永社長「地域サポーターの皆さまとネーミングライツでランニングコストは賄えると思っています。恒久的な施設として地域のアイススポーツの拠点となって、将来的にはオリンピック選手が出ればと」