昭和100年、政治に翻弄された音楽の歴史
今年は戦後80年、そして「昭和100年」にあたる節目の年でもありました。日本の第九の歴史は、まさに激動の昭和とともに歩んできたといえます。
この100年を振り返ると、クラシック音楽を取り巻く環境は時代とともに大きく変化しました。例えば戦時中、日本では敵国語の使用が禁じられ、米英の音楽も放送禁止となりました。しかし、同盟国であったドイツの音楽は許容されていたのです。バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの「ドイツ三大B」が戦時中の日本でも聴き継がれたことは、あまり知られていない事実かもしれません。
一方で、音楽は常に政治の影を背負ってきました。名指揮者フルトヴェングラーはナチスへの協力疑いで活動停止処分を受け、現代でもロシアの指揮者ワレリー・ゲルギエフが政治的立場から除名や公演中止に追い込まれています。また、スターリン体制下のソ連では、ショスタコーヴィチが当局の検閲に苦しみながらも、曲の中に密かな「仕掛け」を施して抵抗を試みました。政治が音楽を利用しようとする一方で、音楽家たちはしたたかに表現の自由を守ろうとしたのです。







