7年ぶりの訪中、急接近の背景

プーチン大統領とともに、この首脳会議で注目すべきはインドのモディ首相です。モディ首相は今回の訪中に先立ち、先週は日本を訪れ、石破茂総理との日印首脳会談で安全保障や経済、人的交流など幅広い分野での協力を確認したばかりです。

日本とインドは、アメリカ、オーストラリアを加えた4か国協力の枠組み「Quad(クアッド)」を通じて、中国の海洋進出を念頭に置いた安全保障協力を進めてきました。しかし、一方でインドは、このところ中国との接近を進めています。モディ首相の訪中は実に7年ぶりで、習近平氏と個別会談も行われる予定です。

インドと中国は、国境を接する地での領土問題や、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世のインド亡命をめぐる問題などで長年対立してきました。近年では2020年6月に、中国軍とインド軍が係争地で衝突し、死者も出ました。さらに、中国がインドの隣国パキスタンを支援するという複雑な構図も存在します。では、なぜこの二国が急接近しているのでしょうか。

トランプ関税が皮肉にも両国を結びつけた

インドと中国が接近した背景には、皮肉にもアメリカのトランプ大統領がいます。

トランプ政権は、日本や韓国に15%の追加関税を課しましたが、インドには当初、それを上回る25%の追加関税を課しました。これだけでもインドは態度を硬化させていましたが、先週27日には、一部のインド製品に対し、さらに25%上乗せした50%の関税を発動しました。アジアで最も高い関税です。

トランプ政権の言い分は、インドがウクライナ侵攻を続けるロシアから安価な原油の輸入を急増させ、ロシアの財政を支えているというものです。また、そのロシア産原油を加工した石油精製品をヨーロッパなどに輸出し、稼いでいることも非難しています。

アメリカとインドの関係がぎくしゃくすることで、中国はチャンスと見てインドに接近しています。対立してきた国境の緊張を緩和させるメリットがあるからです。