少女が体験した指名手配からの逃亡生活
神戸:
本のタイトルは『爆弾犯の娘』。
まさに桐島さんの指名手配写真が交番などに貼られていたその横に、梶原阿貴さんのお父さんの写真も出ていたという話ですよね。
小宮:
本のカバーに載っているイラスト、真ん中にいるのが桐島聡。
横が梶原譲二(逮捕時37歳)なんです。
神戸:
逃亡生活14年間。その中で生まれたのが、梶原阿貴さん。
なぜか家ではお父さんが小さな部屋に隠れている。
「靴はいつも枕元に置いて寝ろ」と子どもの頃から言われてきた。
お父さんの実の名前を知らない。
この本の中に書いてあって、びっくりしました。
本の前半は、逃亡生活、何か変な家族の物語です。
「どうしてこんな生活をしなきゃいけないのか」と大きくなって戸惑っていく娘がいて、後半は父が逮捕された後にどんなことが起きていったのか。
これはまさに、ノンフィクション。
驚きました。

【梶原阿貴著『爆弾犯の娘』(ブックマン社刊、税抜き1800円)】
1970年代、連続企業爆破事件の実行犯の一人として指名手配。
50年もの逃亡の末、2024年1月に実名を明かして亡くなった、桐島聡。
彼の生き様を描いた映画『桐島です』(監督:高橋伴明)のシナリオを書いたのは、脚本家・梶原阿貴。
1973年生まれの彼女がなぜ、この作品を克明に書けたのか?
それは、彼女の父親も桐島聡と同じように爆破事件に関与し指名手配され逃亡していたからだった。
逃亡の中で生まれた娘。家族は嘘を重ねていく。娘は嘘の渦に翻弄される。
それでも「家族」は終わらない。では革命は?
神戸:
映画の中で、「くさや」を焼いたら臭いがすごいので通報されて警察が来るシーンがありました。
注意されて終わるんですけど、本の中には梶原さんの体験した実話として出ています。
小宮:
私と梶原さんはいわゆる団塊ジュニア、1970年代前半生まれで、子ども時代に「くさや」を焼いた記憶があまりなくて。
映画のシーンは70代の伴明監督のアイデアだとばかり思っていたんです。
本の原稿をいただいて、梶原さんのアイデアで、しかも実話だったのかと驚きました。
「くさや」を焼いたら警察が来るという、都会の恐ろしさも感じました。
神戸:
だいぶ臭いのきつい発酵食品ですからね。