妊娠を誰にも打ち明けられずひとりで出産する「孤立出産」が後を絶たない。なかでも技能実習生が置かれた状況は深刻だ。
福岡地裁は7日、死産した男の赤ちゃんをキッチン横のごみ箱に遺棄したとして、21歳のベトナム人技能実習生に、懲役1年6か月執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
弁護団は「必要なのは刑罰ではなく福祉だ」と訴えたが、3人の男性裁判官には届かなかった。
交際相手の自宅トイレで男児を死産

起訴状などによると、ベトナム国籍の技能実習生グエン・テイ・グエット被告(21)は、去年2月、死産した赤ちゃんをビニール袋に入れ、ごみ箱に遺棄したとして死体遺棄の罪に問われた。
争点は、被告の行為が「遺棄」にあたるか。そして被告人に「故意」があるか。

これまでの裁判で弁護側は、「当時は出産直後で心身ともに極限状態にあった。遺体は一時的に置いただけで、遺棄にはあたらない」などと無罪を主張していた。
裁判所の認定 ごみ箱にいれる行為「発見を困難にした」

福岡地裁の判決によると、被告は、交際相手の自宅のトイレで死産後、キッチンに移動してハサミでへその緒を切断し、男児の遺体を白色のレジ袋に入れた。ごみ箱の中にもともと入っていた可燃ごみの上に白色のレジ袋を置き、さらにその上からごみ箱内にあったケーキの紙箱を被せた。
7日の判決で福岡地裁の鈴嶋晋一裁判長は、こうした行為によって「外部から男児の遺体を視認できなくなり、第三者が遺体を発見することは困難になったということができるから、被告の行為は隠匿にあたる」とした。
「ほかのごみと同列のものとして扱うかのように見える」とした上で、「宗教上の埋葬とは認められない」などとして被告の行為は「遺棄にあたる」と認定した。
上から紙箱を被せた行為は「意図的な隠匿」

「故意」があったかについては、紙箱を被せた行為を「意図的な隠匿」とし「故意は優に認定できる」と結論付けた。
一方で「妊娠が発覚すれば帰国を余儀なくされると思い、周囲に相談ができなかった」「被告の意思決定の過程には同情できるところがある」としてグエット被告に懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。