「膳をすえられたら食わねえわけには」

神戸: 続いては、「殺し目」。
下田: ころしめ?「懲らしめ」じゃなくて。
神戸:「目」ですね。
下田: あら、流し目みたいな?
神戸: そうです。異性を悩殺する目つき。
   文例は「『かんにんしておくれなんし』と例の殺し目しり目でにっこり」。
下田: ふふふ、なるほどね。
神戸:「尻目」というのは、眼球だけ動かして、後ろを見る。
下田: ちょっとしどけない感じが目に浮かびますね。
神戸: 酒を2人で酌み交わしながら、「堪忍して」と微笑まれたらどうします?
下田: もう、射抜く感じですね。

神戸: 女性から攻めている言葉をいっぱい使って出しています。
   これは?「膳を据える」。
下田:「灸をすえる」ではなく?何でしょう…。
神戸: 古い言葉で「据え膳食わぬは男の恥」みたいな言い方があるでしょ?
   今でも、残ってはいますよね。
下田: もう、あんまり言っちゃダメだけどね。
神戸: 元の言葉は「膳を据える」なんです。
   つまり女性が、男性に膳を据えて、色目を使うこと。
   文例は「お吉めがおかしな眼付をしたり、何かしてお膳を据ゑるから、
   箸を取らねえのも変だと」。
   お膳を出して「どうぞ」としなだれかかるようなのを「膳を据えてきたぞ」
   「これは我慢できねぇぞ」みたいな感じだったんでしょうね。
   それが、「据え膳食わぬは男の恥」という言葉で
   現代にちょっと残っている。元々は、女性からのアプローチだった。
下田: あらー、積極的ですね。神戸:そういうものだと思います。
   男女どちらかが一方的に、というのではない。
   女性が攻めていく言葉、他にもいっぱいあります。