女子サッカーなでしこリーグ2部の「ディオッサ出雲FC」に所属するブラジル人選手2人が、監督やコーチからパワハラやセクハラを受けたと告発した。海外でも人事権や裁量権を持つ立場の者によるセクハラ・パワハラは問題となっている。法学者の谷口真由美さんは11月11日に出演したRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で、「スポーツ界の構造は問題になっている」と指摘した。

監督やコーチが性的な言葉で叱責、嘲笑

女子サッカーのなでしこリーグ2部「ディオッサ出雲FC」に所属するブラジル人の選手2人がパワハラ・セクハラを受けたということで、告発の会見をしました。これに関連して、きょうはスポーツ界におけるセクハラの話、海外の事例などもお話します。

2人のブラジル人選手が11月6日付で告発文を日本女子サッカーリーグに送りました。一定期間のクラブの活動停止とか関係者の処分を求めています。記者会見した2人の選手はブラジル人なので、通訳を付けることを契約上義務付けられていました。ところが、実際には週1回程度しか通訳が来なかったと訴えています。

日本語の指示が分からずに戸惑う2人を、監督やコーチらが嘲笑したり、入団当初から性的なポルトガル語で侮辱していたということなんです。監督については選手が練習や試合でミスをすると男性器などを意味する性的な言葉で叱責をしていたとも訴えています。

日本サッカー協会は暴力や差別の排除を目指して、クラブに「ウェルフェアオフィサー(サッカーを楽しむサッカーファミリーの安心・安全を守り、より快適なサッカー環境を構築する役目)」という担当を設置しているんですが、その担当者が今年5月に監督と話し合った際に、監督から「チームの理事長に直訴するなら、2人を使わないよってなっちゃう」と、試合に起用しないことを示すパワハラ発言をしていたということです。

さらに、コーチについては通訳がいなくて日本語の指示を理解できない2人に対して、「こいつら分かってんの?」と嘲笑したり、舌打ちしたりするなどの行為があったということで、2人の選手は急性ストレス障害と診断され、8月にチーム活動から離脱して心療内科に通っているという状況です。

2選手はクラブに対策を求めたけれども、自浄作用が働かないから告発することになったという話なんですね。試合に出られないことでメンタルも悪化していて、彼女たちからすると「そもそも何をしに日本に来たんだ」という話になっているでしょう。

スポーツ界はハラスメントが起こりやすい構造

2021年に朝日新聞が「スポーツの現場では指導者の3割が周囲のセクハラを認識しているという結果が出ている」という記事を出しています。これは日本スポーツ協会の2019年の調査によるものですが、多くのところでセクハラがあるというのは認識されているわけなんですね。

女性のスポーツであっても男性がコーチ・監督であるということは非常に多いですよね。現場で見ていてもそうです。これは構造上、スポーツ界は女子がトップ・オブ・トップに行けるようになっていないという問題があります。トップになった選手から指導者が出てくるという構造上、男性が多いということなんですよね。

スポーツはある意味社会の鏡なので、社会のジェンダー格差=ジェンダーギャップ指数と、スポーツ界は連動していると言えます。ですから日本の女性がジェンダーギャップがあるという状況においては、その構造は残りやすいということです。

そもそもスポーツ界というのは、ハラスメントが非常に起こりやすい構造の問題を持っています。コーチや監督の言うことに逆らったら選手にしてもらえない、レギュラーにしてもらえないなど、色んな意味で人事権とか裁量権みたいなものが、ものすごく集中しているということがあるので、「ガバナンスをちゃんと高めないといけないですよ」ということが、色んなところから言われていて、スポーツ庁も「女性の役員を連盟に4割入れなさい」と言っています。