「特攻に志願」零式水偵の搭乗員だった98歳の男性

速度が遅い水上機による特攻はフロートを下駄に例えて「下駄履き特攻(げたばきとっこう)」と呼ばれました。
なぜ当時の若者は特攻に飛び立ったのか?
零式水上偵察機の搭乗員だった神馬文男さん(98歳)も上官に特攻に志願するか尋ねられたことがあります。

神馬文男さん(98)「搭乗員20人くらいで並んだんですけど、その時に『特攻を志願する者、一歩前に出れ』って。出たです、私。みんな出た。みんなが出た。残ったら大変でしょう。出なかったら。いや俺は行かないっていうね、そういう者が出るはずがない。環境が違う。出なければならない。行かなければならない」
神馬さん自身は特攻に飛び立つことはありませんでしたが、多くの戦友が特攻で命を落としました。

神馬文男さん(98)「みんな仲間が行った、次々行った。いつ自分の番になるだろうか。その方がむしろつらかったですよね。戦争終わったって聞いた時は何とも言えないね、感じだったんですね」
今も残る機体 戦争の理不尽さ

下駄履き特攻にも使われた零式水上偵察機に関する展示を行う意味を担当者はこう話します。

万世特攻平和祈念館 楮畑耕一さん「80年前にはこういう飛行機がたくさんあって、実際戦争に参加して、実際それには人が乗っていて、亡くなっている人たちも結構います。実際そういったことがあるということを喚起させる何かがこれにはあると思います」

志摩歴史資料館 稲冨聡さん「ここから沖縄に毎晩往復攻撃に出ました。かなり過酷なものだったと思います。死地に向かうのと同じなので、今平和だからこそここでそういった人たちが生活していたんだといったことを知ってもらいたい」

戦争を体験し証言できる人が減り続けている中、下駄履き特攻という言葉と今も残る機体は戦争の理不尽さを静かに語りかけています。