5年前、広島県福山市のアパートで住人の男性が死亡しているのが見つかり、当時同居していた男が傷害致死の罪で起訴された事件の裁判員裁判が始まりました。1日の初公判で、男は起訴内容を全面的に否認…。検察側、弁護側の主張は、真っ向から対立しています。

起訴状によりますと、野崎展矢被告は、2017年12月下旬から翌月の1月26日の間に、福山市引野町のアパートで林秀樹さんに頭を殴るなどの暴行を加え、出血性ショックで死亡させたとされています。
黒髪を後ろでくくり、白いカッターシャツに黒いスーツ姿で法廷に現れた野崎被告。
検察が朗読した起訴内容に対し、「否認します。林さんに対し暴行を加えた事実はありません。死因は出血性ショックでも外傷性ショックでもありません。本当の死因は弁護士から説明しますので聞いてください」とはっきりと大きな声で話しました。
検察は冒頭陳述で裁判の争点について、「林さんの死亡の原因が他人からの暴行かどうか…。そして、その暴行を加えたのが野崎被告かどうか」だと主張。
そのうえで、事件に至るまでの経緯を説明しました。
検察によると野崎被告は2018年12月10日に以前の事件で服役した刑務所を出た後、すぐに林さんの家で同居を始めました。
そして、およそ1か月半後の1月27日に林さんは自宅で遺体で発見されました。
検察は今後の裁判で、亡くなる前に林さんが、野崎被告から暴力を受けていたことを、林さんのヘルパーや野崎被告の知人の証言などで立証するとしています。
一方、弁護側は冒頭陳述で、「検察が林さんの死因としている外傷性ショックの根拠となる鑑定が、間違っている可能性がある」「仮に外傷性ショックが死因だとしても、暴行を加えたのは被告人ではない」と述べました。
林さんの遺体から確認された後頭部の傷は、林さんが、飲んでいた薬の副作用でふらつき、転倒したことでできた傷…、耳の付け根の傷は林さんが日頃からつけていたマスクが衛生的ではなく、化膿してできた皮膚疾患によるもの…と説明。現場の室内に大量にあった血痕は被害者とは別の人物のものだと主張しました。
そのうえで、「林さんの遺体を司法解剖した医師が現場の室内の血痕は被害者のものとであると予断をもって鑑定していた」「死因は薬剤の大量摂取による窒息死や林さんが元々患っていた心疾患による死亡も考えられる」などと主張しました。
裁判員裁判は14回の公判が予定されていて、遺体の解剖をした医師や捜査に当たった警察官…、被害者の知人など15人の証人が法廷で証言する予定です。判決は来月4日に言い渡されます。