全国で唯一「社会復帰支援部門」が設けられている長崎刑務所。九州各県の知的障害受刑者が集められ、社会復帰を支援する事業が2022年から5年計画で進められています。障がい者の就労支援を行っている地元の社会福祉法人と連携し効果の検証には大学も協力するなど様々な機関が関わって知的障害受刑者の更生を目指しています。

(長崎刑務所 竹内徹 所長 当時)「(この事業は)必要な支援がこの刑務所在所中から進み、途切れることなく出所後の支援に結びつけることで、ひいては安心安全な地域社会の実現に寄与できるのではないかと期待しているところです。」
モデル事業導入の背景には知的障害のある受刑者が、再び罪を犯して入所する「再入率の高さ」があります。法務省の調査では、2022年における2年以内の再入率は、出所者全体が13%なのに対し、知的障害受刑者は25.8%となっているほか、再犯までの期間が比較的短いとされています。このため長崎刑務所では受刑者の特性を確認したうえで社会復帰ができるよう特性に応じた3つのコースを設けて様々なプログラムを行っています。

プログラムではビジネスマナーを学んだり犯罪防止学習をしたりといった独自の取り組みが進められています。事業の開始から2年。去年12月には法務省など関係機関が参加して中間報告会が行われました。

(長崎刑務所 村上正剛 所長)「開始当初はプログラムの受講に消極的な態度を示す人も少なからずいましたが、徐々にそういった人は少なくなり、現在はほとんどの対象者がプログラムの受講に前向きで再受講を希望する人も珍しくありませんし、福祉の支援を受けて社会復帰を目指す意向を示す人も増えてきました。」
法務省によると去年9月までに出所した28人のうち、帰る場所を確保できたのは27人と9割を超えていて、2022年より10ポイント以上高くなりました。プログラムを通じて福祉施設の存在や社会のサポートを知り出所後の生活拠点や就職先の支援を行うことで再犯防止につなげています。

(長崎刑務所 平川勝文看守長)「自分が失敗しないためには困った時に相談するんだということをいうような者が多くなっていたので、誰かに頼ることが自分にとって大事なんだという態度変容が見られていることは1つの成果として実感を得ている所ではあります。」
受刑者に占める知的障害者の割合が、徐々に増加しているという調査もある中、福祉機関と連携して更生を目指す長崎刑務所の取り組みは全国から注目を集めています。








