金沢市涌波に去年11月にオープンした、「THREE ARROWS」。小村さんが、妻の美奈子さんと切り盛りする、小さな喫茶店です。


妻・美奈子さん
「焼き芋がメインで、あとは焼き芋を使ったお菓子と『エアロプレス』というちょっと珍しい器具を使った美味しいコーヒーを提供させて頂いてます」

店の看板メニューは、焼き芋を使ったスイーツ。能登町で採れた「紅はるか」は、およそ3時間かけてじっくりと焼き上げ甘みを引き出します。


兵藤遥陽アナウンサー試食
「お芋がとろける!しっとり滑らかな食感、美味しい」

小村さん夫婦にとって店のオープンの原点にもなった、「焼き芋」との出会い。そこにはある特別な思いがあったといいます。


小村宗紀さん
「私自身が5年前にがんで。末期の肺がんで『余命2か月』と言われまして。要するに末期で手術もできないし、抗がん剤の治療をするしかないってお医者さんに言われたんですね。でも、自分でも死にたくはないので何かできることはないかと医者に聞いたときに『とにかく食べることです』と言われて」


抗がん剤の副作用で味覚障害が起き、何も食べても「甘い」と感じるように。そんな時、お見舞いにもらって唯一、口にできたのが焼き芋でした。

小村宗紀さん
「それ(焼き芋)で命が助かったみたいな所があるんです。それで、やっていく上で少し体調が戻った時に『もういっそのことこれを仕事にしてみんなにも焼き芋を食べてもらって、少しでも自分と同じような方がいて元気になってもらいたいということで始めました」


妻・美奈子さん
「不思議と余命宣告を先生から聞いた時も、なんか大丈夫な気がして。本人も上を向いて頑張っていたので、それに家族みんなが助けられて一緒に頑張ってくれたような気がします」

抗がん剤治療を経て、現在も療養を続けている宗紀さん。地震に病と、度重なる困難に見舞われながらも、焼き芋に救われた命で、今度は店を訪れる人たちに希望を届けたいと話します。


小村宗紀さん
「地震で家を無くしたり家族を亡くされたり。病気や地震じゃなくても社会的に問題を抱えてたり、良いことばかりじゃなくて辛い事や嫌な事って必ずあると思うんです。ちょっとでもここに来てもらってコーヒーなりお茶なりね、色んなものでほっと一息ついてもらって、少しでも癒されて帰ってもらえるんなら、それでいい」