しかし、新たな壁に直面します。福島第一原発の処理水の海洋放出です。稲村さんは地元の水産業の支援にも取り組んでいます。

広野町のとなりにあり、ヒラメやカレイなどの水揚げが盛んな久之浜漁港です。久之浜出身で、港で魚介類を買い付けする仲買人をしていた根本一教さん(57)。津波で家と店を失い廃業に追い込まれましたが、4年前から、広野町で地魚を扱う飲食店を始めました。

(根本一教さん)「漁師さんにしてみれば、原発事故の風評もあった。(処理水放出は)それに続いてだから不安はあった。安全安心だと思うが、世間はそう受止めないだろう」

根本さんが経営する飲食店は、稲村さんから場所探しや資金面のサポートを受けて開店しました。

(根本一教さん)「地元産のクロダイ。脂がのっている」

処理水の放出に新型コロナも重なり、客の数は一時、大きく減少したといいます。

(客)「うまいうまい」
(客)「食べて安全というところを、我々も応援しながら伝えていきたい」

(根本一教さん)「地元の魚を食べていただけるのはありがたい。(稲村さんは)何かあったら相談もできるし、兄のような存在」