
代々漁師の家で生まれ育った和田さん。
「勉強なんか大嫌いでしたことないんだけど、船や海の勉強なんとなく好きやなっていうのがあった」
宇和島水産高校を卒業したのち、20代半ばで父の背中を追い漁師に。
それから20年あまり。
共栄網で妻とともに子ども3人を育てあげ、家のローンも返済が終わった中での火災でした。
「一日でも早くみんなが沖に出て商売ができるような状態を目指しているので…」

「1ケ統(一組)での浜上げはなかなかやっぱ厳しいかな」(和田さん)
そんな中、力を入れたのが、加工品の開発、販売までを手掛ける6次化による販路の拡大です。
(商談)
「すごくおいしい」
これまで共栄網の販路は地元の市場などが大半。小売店とは直接取り引きをしていませんでした。
しかし・・・
「販路拡大ができない事にはうちはもうこれからは成り立っていかないと思う」(和田さん)
売り上げを伸ばすため漁師自ら商談などを進めてきました。
この1年間で決まった新たな取引先は県内外の小売店や飲食店など10件以上。
さらに、学生など連携し、商品開発にも取り組んでいます。
「魚を獲ってくる側の人間としてはそういう繋がりができたのはすごく大きいことだと思う」(和田さん)

和田さん
「装備品?」
福島産業・福島 大蔵さん
「全部つけて渡せる」
和田さん
「このまま?」
費用の面から新造船は諦めましたが、伊方町の同業者から中古船を売ってくれるという話を受け、見学に訪れました。
(福島産業・福島 大蔵さん)
「去年ああいう事故があったんで、同業者で。いち早くお声がけをしていたので」
和田さんはこれまで、漁の合間を縫い、県内各地の業者などにかけあってきました。
和田さん
「これ福島さんぶっちゃけ値段の話をさせてもらえたらいいと思うんだけど」
福島産業・福島 大蔵さん
「2隻で片手(500万円)。その金額っていうのは本当に良心的な価格だと思うよ」
和田さん
「重々承知の上、厚かましいんだけど、少しでも勉強(安く)していただいたら」
「全然破格と言えば破格。でもうちの財政から考えると…エンジン変えないといけないからそれを考えると少しでも安く買って帰るのが僕の役目かなと」(和田さん)

「物がないのに商談をさせてくれっていうことばかり出てきて」(和田さん)
去年9月以降、海のしけなどによって漁に出られない日々が続き、販売できる魚がなくなってしまいました。
「これ全く映らんなってるな」
「やばい、イワシが映らん」
久しぶりの漁に出た和田さんですが、イワシの群れをレーダーで捉えることができません。
「だめです。ははは。帰らないかんかね、残念でした」(和田さん)
この日、魚は全く獲れませんでした。なかなか先の見通しは立ちません。

「本当の正念場は今年1年だから、みんながちょっと気合を入れて頑張っていかないといけないなという始まりだから決起会を含めてこういう場があったらいいなと思って」(和田さん)
共栄網に20人全員の漁師が集まりました。
「続けられているのも仲間がいるからじゃないかなと今思うかな。若いやつらも(辞めずに)みんなおるけんなんとかみんなで頑張れるんだろうって。よりどころはあった」(和田さん)
漁師たち
「(和田さんは)頼れる」
「頼れる先輩ですね」
「兄貴みたいな感じですね」
「俺は火災当日の若い奴らの顔だけは忘れまいとは思っている、今でも。仲間、一緒にやっている人間が折れていないんだったら俺が折れるわけにいかんし」(和田さん)

「この26日の火災でうちらは一度終わっているんやけん、これ以上のことはないけん。これからが始まりって思うし、あの火事がきっかけになってここまでなれたなっていう風にあと何年後になるかわからないけれど、そこまで持っていけたらね。終わりの日だったし始まりの日だったかなってね」(和田さん)