11月5日の「世界津波の日」に合わせては、岩手県内各地でも津波を想定した防災訓練が実施されました。東日本大震災の発生から12年半以上が経った訓練では、この間進歩したデジタル技術の活用が見られました。
(訓練)
「東日本大震災クラスの津波が来ます。直ちに高台に避難してください」
「世界津波の日」の11月5日、岩手県陸前高田市で津波避難訓練が行われました。避難の対象となったのは、津波で浸水する恐れがある場所に住む市民3343人と市を訪れていた観光客で、浸水区域の外にある市内合わせて177か所の避難場所や避難所を目指しました。
市はこの日の訓練で、災害が発生した場合の安否確認のために新たに導入したあるシステムの本格運用を始めました。
その名も、「シン・オートコール」です。
「シン・オートコール」は、市とNTT東日本が協力して構築したシステムで、2年前から試験運用を重ねてきました。
このシステムを使えば避難情報が出された際、事前に登録された住民の電話番号に対し、市職員がボタン一つで、一斉に電話をかけることができます。さらに電話での住民の受け答えをAIが自動で文字に変換。その情報を市職員が災害時の状況の把握に活用します。
このシステムを防災の分野で本格運用するのは、陸前高田市が「全国初」です。
「(AI音声)津波避難訓練は避難しましたか?はい、またはいいえでお答えください」
「いいえ」
「いいえ、と認識しましたね」
市は、津波だけでなく、大雨や土砂災害でもこのシステムを活用する予定です。
現在、登録が可能となっているのは、市が災害危険区域や、孤立の恐れがある場所と指定しているところの住民およそ300人ですが、登録者数は70人に留まっていてシステムの周知が課題です。
(陸前高田市防災課 中村吉雄課長)
「全市民の方にご利用いただくということよりは、必要な方にシステムを使っていただいて、命を守る、あるいは安否の状況について市のほうに伝えていただくと。今後必要な方にはこれをどんどん使っていただきたいなと思っております」
デジタルならではの課題もあります。
文字に変換する際にうまく判別できなかったり、災害時、電話回線に通話制限がかかったりするなどの問題の発生も想定され、市は今後もシステムの改良を重ねるとしています。