■強豪北照高校に大差で敗れるものの、光る素質で大学野球に勧誘

 中学を卒業した滝田投手は、地元の寿都高校へ進学します。野球部員は9人に満たず、1年と2年の秋季大会は『連合チーム』で大会に出場していました。

 「練習も集まるのが大変で。大会前に2、3回やったぐらいでした」

 そんな環境で、左腕を振り続けた滝田投手。今でも忘れられない出来事があるといいます。

 「1年の秋に、新聞4紙ぐらいに載ったんです」

母親の美智子さん

 2018年秋の小樽地区大会。対戦校が、翌年に合併することから”最後の大会”になるということで、スポーツ紙の記者が、球場に集まりました。そんな注目の試合で、滝田投手は17奪三振の快投を見せてコールド勝ち。翌朝新聞の見出しに滝田投手の名前が躍りました。

 「朝、起きたら、母がコンビニから持ってきた新聞を手に、誰かと嬉しそうに電話していました。ほとんど怒られた記憶しかありませんが、唯一褒められた記憶として、今でもずっと覚えています」

 そんな母と歩んだ高校3年の春、運命を分ける試合がありました。甲子園の常連校でもある北照高校(小樽市)と地区予選準決勝で対戦。1-14(5回コールド)の大差で敗れましたが、その試合を、星槎道都大の二宮至監督(70)が視察していたのです。

星槎道都大の二宮至監督(70)

 そこで滝田投手の素質を見抜いた二宮監督は、大学への勧誘を始めます。とはいえ、滝田家は、すでに進学している兄姉もいて、家計は火の車。当時、滝田投手は、高校卒業後は「家計を助けたい」という思いから就職を考えていました。母親の美智子さんも、滝田投手が大学に進学することは想定していませんでした。
 それでも巨人で6年間プレー経験がある二宮監督は、美智子さんと滝田投手に粘り強く、大学への入学を勧めました。