札幌市の繁華街ススキノのホテルで殺害された男性の頭部を持ち去るなどしたとして、親子3人が逮捕された事件…捜査本部は、殺人容疑でも3人を逮捕しましたが、5月下旬、29歳の女と男性が会ったダンスクラブに父親もいて、事件前から男性と面識があったとみられることが新たにわかりました。

 札幌市厚別区の無職、田村瑠奈(るな)容疑者29歳と父親で医師の修(おさむ)容疑者59歳、それに母親でパート従業員の浩子容疑者60歳の3人は共謀し、7月1日深夜から2日未明にかけて、札幌市のススキノのホテルで恵庭市の62歳の男性を刃物で刺殺して首を切断、頭部を持ち去るなどした疑いが持たれています。

10代後半の瑠奈容疑者

 男性は両手を体の後ろで拘束され、背後からの首付近への致命傷は、肺の近くまで達していました。

10代後半の瑠奈容疑者

 捜査本部は、現場のホテル客室に男性と一緒に入った後、1人で退室した人物を瑠奈容疑者と特定していて、瑠奈容疑者が殺害などの実行役、父親の修容疑者と母親の浩子容疑者も、頭部持ち去りなどだけでなく、殺害についても計画段階から関与していたとみています。

総合病院の精神科長、父親の修容疑者

 一方、修容疑者と浩子容疑者の弁護人が18日、コメントを発表後、取材に応じました。
 弁護人によりますと、父親の修容疑者は、事件前、瑠奈容疑者と一緒に刃物を購入したり、瑠奈容疑者を車でススキノに送迎したりしたことを認めています。

 その上で、男性の殺害などについては事件後に知り、浩子容疑者共々「一切共謀しておりません」としています。

 さらに、捜査関係者への取材に基づき、報道された浩子容疑者の「娘の犯行を止めたかったが、止められなかった」という当初の供述についても「そのような事実は一切なかった」としています。

<被害男性の遺体、客室の状況など>

・7月2日午後、遺体発見
・死因は、出血性ショック
・致命傷は、背後からの首付近の刺し傷
・刃物が肺まで達する
・両手を後ろで拘束
・殺害された後に首を切断
・頭部を持ち去られる
・襲われた時に抵抗してできる防御創なし
・ホテル客室の浴室で全裸
・浴室の血は、洗い流された状態
・浴室以外のベッドなどに利用の形跡なし
・衣服、携帯電話などの所持品なし
・睡眠導入剤などの薬物検出なし

<親子3人の動きなど>
・瑠奈容疑者が5月下旬、ススキノのダンスクラブで初めて会ってトラブルに発展か
・その日、ダンスクラブに父親もいて、事件前から被害男性と面識か
・何時間も自宅前の車内で過ごす精神科医の父親
・父娘2人で自宅近くの量販店へ
・7月1日午前2時ごろまでに刃物など揃える
・ノコギリ、スーツケース、複数の刃物、金髪ウィッグ、手錠など
・防犯カメラに映像、父親のクレカ履歴も確認
・1日午後8時ごろ、ノコギリを追加で購入
・1日午後10時50分ごろ、瑠奈容疑者が被害男性と2人でホテルへ
・2日午前2時ごろ、瑠奈容疑者1人だけ退室
・大きなスーツケース引く
・入室時と退室時で異なる服装
・現場に瑠奈容疑者の指紋なし
・父親はマイカーで瑠奈容疑者を送迎か
・2日未明、父親がコンビニで10袋ほどの氷を購入
・防犯カメラの映像には父親1人だけ
・父親の車で、ダンスクラブへ
(被害男性と会っていた店舗とは別)
・母親も計画段階から認識などの疑い
・母親は当初「娘の犯行を止められなかった」などと供述か
(弁護人は否定、報道は誤りと指摘)

<家宅捜索などで判明、押収など>

・自宅2階の浴室で頭部発見
・ビニールに包まれ、容器に入った状態
・腐敗すすむも、歯形で被害男性と判明
・事件直前のディスコイベントで被害男性が着用とみられる“衣装”を押収
・親子3人のスマホも押収
・頭部を浴室で撮影の動画発見
・手袋はめて頭部に触れるシーンも
(誰が触れたか、撮影したかは不明)
・映像の頭部は、まだ腐敗がすすんでない状態
(どこで動画発見かは不明)
・男性の運転免許証、財布、衣服を発見
・男性のスマホは、ホテルで瑠奈容疑者が破壊か
・SIMカードは父親の車で発見~押収
・3人のいずれかのスマホに「ススキノ 殺人」と検索した履歴
・瑠奈容疑者のスマホに男性と連絡を取り合った形跡なし
・3人の自宅から約20本の刃物を押収(ノコギリ4本、その他の刃物十数本)
・父親は刃物購入に同行、ススキノへの送迎は事実と認める

小学校の卒業アルバムの瑠奈容疑者

 小学生の頃から学校を休みがちになり、やがて不登校になったという瑠奈容疑者ですが、近くの住人は、目立ったトラブルなどは一度もなく、時おり見かける姿は「質素というか、普通な感じ」と口を揃えています。

 高校の同級生(男性)も「学校に来ていたのは1年目くらいで、卒業しなかったはずだが、正直、美人だったので、印象がある」などと話しています。

10代後半の瑠奈容疑者

 <同級生の男性が話す高校での瑠奈容疑者>
・1年目は、よく学校に来ていた感じ
・とても美人という印象強い
・女子とは、よく会話
・男子とは、ほとんどなし
・隣の席になった時も、自分とは挨拶程度
・1週間ほどの宿泊学習があり、1年目は参加
・1年目の途中から、学校に来たり、来なかったり
・2年、3年の時は、ほとんど見かけなくなった
・事情があったのは彼女だけではないので、話題にならなかった
・卒業しなかったのでは?
・集合写真などにも姿なし

 その後、20代前半の半年間、欠かさず通ったアクセサリー制作教室で「普通に明るい笑顔」を見せ、熱心にリングやペンダント、人形用の飾りなどを作っていたという瑠奈容疑者。

 休みがちになった際、講師が電話すると、母親の浩子容疑者が出て「朝起きて外に出られない時は、無理に『お教室行きなさい』とか言わないで、自由にさせているんです」などと話したといいます。

被害男性と瑠奈容疑者が会っていたディスコイベントのPRポスター

 未だに交友関係に謎の多い瑠奈容疑者…被害男性とは5月下旬、ススキノのダンスクラブで会い、当日中にトラブルに発展していたとみられています。

ディスコイベントで、被害男性と“長く”抱き合う瑠奈容疑者

 当日の「ファイナル」と銘打たれたイベントでは、DJに最も近いフロアで踊ったり、被害男性と“長く”抱き合ったりする様子も見せていて、近所の人や高校の同級生らが語る瑠奈容疑者とは大きな“ギャップ”があります。

トラブル当日、瑠奈容疑者と被害男性が会ったディスコイベントにいた父親の修容疑者

 さらに、この日、瑠奈容疑者を車で送った後、父親の修容疑者もディスコイベントの同じフロアにいて、瑠奈容疑者を見守るなどし、事件前から被害男性と面識があったとみられることもわかっています。

 取り調べに対して親子3人は現在、殺人などの容疑を否認、黙秘しているということですが、捜査本部は、引き続き3人の役割や動機など、事件の全容解明をすすめています。