パートナーが同性であることを理由に、扶養関係を認めないのは憲法に違反するとして、元北海道の職員が、かつての職場の北海道などを相手に損害賠償を求めている裁判で、原告に対する本人尋問が17日に行われました。

 原告は「民間が認めてくれた関係を公の機関では認められず、不合理に区別・差別されている」と訴えました。

 札幌に住む、佐々木カヲルさんは、戸籍は女性で好きになる性別も女性です。
 佐々木さんは北海道の職員だった2018年7月と2019年4月に、同居するパートナーの女性と「事実上の婚姻関係にある」として、職場の北海道と地方職員共済組合に「扶養手当」などの支給を求めましたが、認められませんでした。

原告の佐々木カヲルさん

 佐々木さんは、同性であることを理由に扶養関係を認めないのは、憲法で保障する「法の下の平等」に反すると主張し、北海道と地方職員共済組合に対して、あわせておよそ470万円の損害賠償を求めています。

 裁判はおととし9月に始まり、8回目の口頭弁論となった17日、原告の佐々木さんに対する弁護側からの本人尋問が行われました。

 その中で、佐々木さんは「自身のセクシャリティは自身の意思で変えることはできない」と主張。互いの両親にパートナーとの関係を認められていることや、住んでいるマンションの名義がパートナーとの共同名義になっていること、本籍地も一緒で同居生活を送っている現状を話しました。

 また、プライベートでは携帯電話の契約の際「家族割」が適用され、同性パートナーが死亡保険金の受取人として認められていることなどをあげ、民間企業では同性カップルの権利が認めていると訴えました。

 さらに2019年、佐々木さんはパートナーとの関係が認められなかったことで精神的苦痛を感じたとして、職場の北海道を退職しています。
 しかし、その際に受け取った退職金が、定年まで働き続けた場合と比べておよそ870万円少なく、金銭的な不利益を受けたとも主張しました。

 佐々木さんは「北海道の職員として24年間働き、税金も納めてきた。民間企業が認めてくれた関係が公では認められず、不合理に区別・差別されている。明確な司法判断を求めたい」と訴えて、本人尋問は終わりました。

記者会見で佐々木さんは差別の根絶を訴える

 裁判の後に開いた記者会見で佐々木さんは、自分とパートナーの関係について「理解できないなら理解できないでもいいと思っている、ただ差別はなくしてほしい」と力強く訴えました。

 その一方で、度重なる裁判の準備などに「私もパートナーもどこまでやれるんだろうかという気持ちになることがある」と、精神的な負担を抱えている実情を打ち明けました。

 被告の北海道と地方職員共済組合は「現在の法律や憲法における婚姻は、異性間で行うものと想定されている」などとして、請求の棄却を求めています。

 判決は9月11日に言い渡される予定です。

【訂正とお詫び】
18日午前8時42分に配信した記事で、被告を「北海道と労働組合」とお伝えしましたが、正しくは現在表記の「北海道と地方職員共済組合」でした。大変、申し訳ありませんでした。