全国各地で相次いでいるクマによる人身被害。北海道内では7月、福島町で新聞配達員の男性(52)がクマに襲われて死亡しました。

また9月には札幌市西区でも、犬の散歩をしていた男性(43)がクマに襲われけがをしました。

こうしたクマによる人的被害は、ことし4月から9月までの上半期、全国で99件あり死傷者は108人にのぼります。

「もっと駆除すれば被害は減る?」
「麻酔をかけて山奥に放せないの?」

そんなクマにまつわる疑問について、秋田県がWEBページで回答しています。

「正しく知って、正しい知識に基づいてきちんと対策すれば、無駄な衝突をせず暮らしていけると思う。ひとり一人に、正しい知識を身に着けてほしい」
秋田県の担当職員の思いです。

クマについては、「捕獲(駆除)」と「保護」で2つの意見が対立することもありますが、どちらの立場からの疑問に対しても、まずは現状を知って、考えてみましょう。(HBC北海道放送:幾島奈央)

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①クマによる人身事故や農作物被害を防ぐため、もっと駆除すべきではないですか

2020年7月、札幌市南区に、やせたヒグマが繰り返し出没。このクマのものとみられるフンからは、ごみ袋の一部が見つかった

捕獲(駆除)も重要な対策のひとつであり、各地域において状況に応じて捕獲が行われています。

ただし、クマの出没はクマの数「だけ」ではコントロールできません。出没要因を除去しない限り、いくら捕獲をしてもクマの出没は続きます。

捕獲だけに頼る対策では、限界があります。出没要因の除去(農地への電気柵の設置、誘引物となる廃棄作物や生ゴミの適正処理など)と捕獲、両輪で対策を進める必要があります。一人ひとりがクマを集落に寄せ付けない、通わせないよう、対策に努めましょう。

②出てきたクマを捕るのではなく、山に入って積極的にクマを捕獲するべきではないですか

クマの出没や農作物被害、人身被害が多く発生するのは6~10月です。この時期の山は草木が生い茂り、見通しが非常に悪いため、捕獲者がクマと鉢合わせをする危険性があります。

捕獲従事者の安全管理上問題が大きいため、出没や被害の多い時期に山に入って銃を用いた捕獲をすべきではありません。

札幌で行った実証実験。赤丸のあたりにクマの等身大パネルを置いているが、まったく見えない

一方で、人とクマとの間に適切な距離をとり、棲み分けを実現するため、集落周辺に定着している個体に捕獲圧(捕獲の強さ)をかけるなどの対策は必要と考えています。この方法については現在情報収集・検討中です。