■「すごい幸せです。一つひとつが」
午後8時をまわり、かけつけたお客さんがゆっくり楽しめるように、私とカメラマンは取材を切り上げることにしました。ちかさんとてる子さんは、私たちを見送りに玄関に出てくれました。

「いまの保育園は1歳までだから、別の保育園に行くことになって」と、ちかさんはこの日の日中にあった、みぃくんの卒園式の写真をみせてくれました。写真には、ちかさんの腕の中で安心したようにどっしりと座る、みぃくんの姿がありました。
「みぃくん、もう走ったりするんです」と、ちかさんは愛おしそうに写真を見つめます。

「まだまだ慣れない育児に困ることもたくさんあるけど、すごい幸せです。一つひとつが。新たな発見ばかりです」
すっかり親の表情を見せるちかさんの横顔を、てる子さんも頼もしそうに見つめていました。

「お世話になりました、ありがとうございました~」
わたしたちが乗り込んだタクシーがその場を離れるまで、ちかさんとてる子さんは、手を振って見送ってくれました。
わたしは取材以外でも、プライベートで時折この店を訪れていたので、もう店でちかさんに会えないのかと思うと、しみじみと寂しい気持ちになりました。