■この場所のおかげで、いまの自分も家族もある

この店は「自分の本来の居場所だと思っている」と答えていたちかさん


ちかさんは4年前、「この店はどんな場所ですか」という私の質問に、「自分の本来の居場所だと思っている」と答えていました。その場所を離れることに不安はないのか尋ねると、ゆっくりと噛みしめるように答えました。

「寂しさはあるけど、この店がある限りまったく無関係になるわけじゃない。この場所のおかげで、いまの自分も家族もあるから」

ちかさんと仲間のスタッフ

午後7時。ちかさんにとって最後の営業時間が始まりました。魔ァ子さんの「開けます、おねがいします」という掛け声と同時に、1組目のお客さんが来ました。

数年来の常連客たちからは、「ちかちゃんに氷を入れてもらうのも、最後だな…」と寂しそうな声が漏れ出します。

「ちかちゃん卒業おめでとう!かんぱーい」

店のスタッフ全員とお客さんによる、ちかさん最後の乾杯です。

「ちかちゃん卒業おめでとう!かんぱーい!!!」

てる子さんの掛け声とともに、グラスを合わせる音が大きく響きました。

「思いや気持ちを言葉で伝える」という意味が込められた紫の花をプレゼント

お客さんとの会話も盛り上がってきたころ、てる子さんが店の奥から花束を持ってきました。魔ァ子さんから手渡されます。

仲間からのサプライズに、ちかさんは感激したような表情を浮かべました。

てる子さんが選んだ紫の花には「思いや気持ちを言葉で伝える」という意味があるそうです。

「言葉で伝えるのが苦手なちかちゃん、自分の思いを伝えるのが苦手なあなただけど、きみちゃんといいコミュニケーションを続けていい家庭を築いてください、私たちも応援しています!」

てる子さんに続き、店全体も拍手に包まれました。