ごくわずかでも「息が吸えない」一日中ゴーグルとマスクをつけて生活

治療法が確立されていない化学物質過敏症ですが、病を乗り越え社会復帰した人もいます。愛知県設楽町に住む杉浦篤さん(39)です。

植物の研究者として働いていた11年前に突然、周囲の匂いが気になり始め化学物質過敏症を発症。一日中、ゴーグルと医療用マスクをつけて生活するほど症状は悪化しました。
(杉浦篤さん)
「体の状態として外から見る分には全く症状が出てないんですけども『息が吸えない』『体がしびれて全身が痛い』という状態で、起き上がるのもつらい時期が一番ひどいときにはありました」
充実していた研究職を諦め、試しに田舎に住んでみると体調が回復。自然豊かな設楽町に移住することを決めました。ここで始めたのが…
(杉浦篤さん)
「お茶作りができなくなった畑をお借りして、油を取るための種専用のお茶畑として使わせてもらって」
茶畑が点在する設楽町。研究者時代の知識を生かし、お茶の種からとれる油を調べると肌にいい成分が含まれることが分かりました。

会社を立ち上げ、化学物質過敏症の人でも使える天然のスキンケアオイルを販売しています。私生活でも移住後に出会った女性と結婚し、家族と幸せな生活を送る杉浦さん。周囲の人々の理解もあり、いまはほとんど症状が現れることはないといいます。

(杉浦篤さん)
「病気になったときは一人で苦しくなって、すべてを諦めて移住をしたという形ですけど、いまはそのとき諦めたものを色々と取り戻すことができた。できれば移住ではなく原因を取り除いて、いま苦しんでいる人だけじゃなく、将来病気になる人もできるだけ少ないような社会になってくれたらいいなと思っています」