「大麻」と聞くと、マリファナや室内での大量栽培摘発など、まさに「違法薬物」のイメージが強いと思われます。その一方、日本では歴史上「神聖な植物」として扱われ、神社の神事やしめ縄の原料として使われてきたという側面があるのをご存じでしょうか? 現在、法律で厳しく規制されている大麻栽培に取り組む人たちと、その現状について取材しました。

古くから神聖な植物である「大麻」 現在、生産農家は全国でわずか10軒

三重県南伊勢町の中心部から車で5分ほど離れた場所に、有刺鉄線と2メートルを超える柵に囲まれた畑がありました。ここで栽培されているのは…「大麻」です。

(伊勢麻 松本信吾会長)
「これが規制緩和前に設置が義務付けられていた2メートルの柵。『有刺鉄線も張りなさい』と」

この畑では厳しい管理の下、大麻が「合法的に」栽培されてきました。今の秋の時期はほとんど生えていませんが、収穫が行われる夏には人の背丈を超える高さまで生い茂ります。薬物としての成分がほとんどないように品種改良されたものが、栽培されているのです。

日本では古くから「神聖な植物」として茎の部分が神社のしめ縄に使われ、お札の呼び名にもなっている「大麻」。しかし戦後、大麻取締法で禁止されると栽培方法や販売先が厳しく管理されるようになり、大麻栽培は下火に。今は全国で10軒ほどしか栽培していません。

(伊勢麻 松本信吾会長)
「これから全国の神社に販路も出せて、生産量も増えていけばちゃんと農業として成立するようになると信じ、みんなで頑張っている」

三重県が先駆けて規制緩和! 新たな商機につながる可能性も

今や、神社で使われる分も輸入品に頼っている中、日本古来の麻文化を大切にしようと、一般社団法人「伊勢麻」振興協会が大麻の栽培を始めたのは7年前のことでした。

(伊勢麻 松本信吾会長)
「ほんとに国産大麻が危機的なことを知って、これをなんとか伊勢の人間で守っていきたいと思った」

収穫した麻で使うのは茎の部分だけ。乾燥させた後、水に漬け込み発酵させます。そして、手作業で皮を剥ぎ、繊維状にしたものがしめ縄や神事で使われる麻である「精麻」となるのです。

これまで国産大麻は販売先も厳しく管理され、新たに販路を広げることは出来ませんでしたが、2022年に三重県が全国に先駆けて規制を緩和。住宅地での栽培や販売先の拡大などが認められるようになり、農業として成り立つことも期待されています。

(伊勢麻 松本信吾会長)
「ことしから出荷先も自由になった。(これまでのルールでは)新しい方が伝統を守るこの農業をやりたいと思っても、仕事にならないので…ようやくスタートライン」