児童養護施設退所後に立ちはだかる“18歳の壁”
児童養護施設は原則、18歳までに退所しなければならないが18歳までの自立は難しいとの声が多いことから、2024年4月から年齢制限が撤廃されることになった。
また、厚労省が児童養護施設を始めとする社会的養護から離れた約3000人に調査すると、5人に1人が「退所後のサポートがなかった」と回答。
退所後は 身近に頼れる大人がおらず、孤立して経済的問題を抱えるなどのケースも少なくないことから、井上さんの寮は、そんな行き場のない若者たちの受け皿になっている。
井上さん「児童養護施設を退所してすぐの18歳での自立は難しい。仕事が続かなかったり、人間不信になったりした子たちを多く見てきた」
児童養護施設の退所は18歳…でも「自立するのが怖かった」
井上さんの寮で暮らす1人、酒井竜也さん(20)。
児童養護施設を出てどうしようか悩んでいたとき、井上さんに声をかけられた。
酒井さん「18歳になったから、児童養護施設を出て行くことになって…何も定まっていない。そもそも一般を知らないので自立するのが怖かった。」
人付き合いが少し苦手な酒井さんは、様々な仕事が長続きしなかったが、井上さんに勧められて、いまはこのホームの運営スタッフとして勤務。
週5日、時給1000円で寮の食事や得意なパソコンを使っての事務作業を担当している。
酒井さんの作る食事。寮生には評判が高い。
この日は、親子丼を作った。
寮生「竜也くんが作るごはんが、一番おいしい」
酒井さん「ありがとう」
このとき、初めて酒井さんの頬が緩む姿をみた。少し照れていた。
酒井さん「いずれは、このホームで子どもの担当が持てるようなスタッフになっていければいいなと」
井上さんは、これまで「23人」をこの寮から社会へ送り出した。
その子どもたちはいま、自衛隊、ラーメン店、建設の仕事など様々な分野で活躍している。
井上さんの寮は、ただ生活を支える場所ではなく社会に出て行くための橋渡しになるそんな場所だった。