「死刑」か「無期懲役」か
「差し戻し審」に至るこれまでの裁判で、ずっと争点になってきたのは「強盗目的」の有無。
検察側、弁護側双方の主張は一貫している。
検察側は、山田被告が金品を奪う目的で大島さん夫妻を殺害し、実際に財布を奪い取ったと指摘。
つまり強盗目的があった「強盗殺人」という主張だ。
一方の弁護側。
山田被告は大島さん夫妻を殺害した後に金品を盗むことを思いつき、財布を盗んだと指摘。
こちらは「強盗目的」はなく、「殺人」と「窃盗」が成立するにとどまるという主張だ。

2019年3月。一審(差し戻し前)の名古屋地裁は「強盗目的」はなかったと判断した。
山田被告に借金があったのは事実だが、「殺してまで金品を奪おうと考えるほど経済的に困窮していたとは考えにくい」として、山田被告に「無期懲役」の判決を言い渡した。

翌年に開かれた控訴審。名古屋高裁は一転した判断を示す。
「強盗目的」を認めず「殺人」と「窃盗」を認定した一審判決には事実の誤認があるとして「無期懲役」の判決を破棄。「強盗目的」が認められることを前提として、差し戻しを命じた。

差し戻し決定から2年後、2022年2月に山田被告は末期がんを告知され、あわせて余命宣告を受けた。
5年後の生存率は数パーセント。
具体的に「1年ももちませんよ」と告げられたという。
