今は1人ずつ検査をしなければ把握することができない新型コロナの感染状況。しかし、浄化前の下水を調べるだけで地域ごとに感染者数を割り出せるようにする研究が進められています。近い将来、「来週のコロナの感染者は1000人の予想です」と天気予報のように予測できる日が実現するかもしれません。研究の最前線を取材しました。

下水のコロナウイルス濃度と新規感染者数が連動していることが判明


変異を繰り返して広がり続ける新型コロナと共存せざるを得ない中、感染状況を把握できる画期的な方法「処理前の下水の調査」が、金沢大学で研究されています。

(金沢大学・本多了教授)
「コロナ感染者の便からウイルスの遺伝子が排出される。地域に感染者がいると、トイレの排水を集める下水にも(コロナ)ウイルスの遺伝子が含まれる」


新型コロナウイルスは、感染者の唾液や便などにも含まれるため、下水のウイルス量を調査することで地域ごとにどの程度感染が広がっているのか把握ができると言います。さらに、下水には無症状や軽症で検査を受けない人の排泄物も含まれているため、今よりも流行の全体像が分かると期待されています。


国も下水調査による新型コロナウイルス感染状況予測の実用化を目指していました。すでに2022年7月から石川県小松市で本多教授を中心としたプロジェクトチームが週に3回、下水調査を実施中です。


処理前の下水からサンプルを採取すると大学の研究室に持ち帰り、全身防護服に身を包んだスタッフがウイルスを抽出した上でPCR検査にかけます。

検査で分かるのは、下水1ℓ中のウイルス量。下水に含まれる新型コロナウイルス濃度が濃ければ陽性で、結果グラフの曲線が立ち上がります。逆に陰性だと立ち上がりません。本多教授は、この方法が感染状況の把握に役立つと確信しています。


(金沢大学・本多了教授)
「こちらは第6波の状況を示しています。感染陽性者数が上がったり下がったりするのと、下水のウイルス濃度の上がったり下がったりするのが大体同じように推移している。第7波のはじまりは、下水調査の方が早く捉えられている」

研究を重ねた結果、下水中の新型コロナウイルスの濃度が1週間後の新規感染者数と連動することが分かってきました。新型コロナに感染すると発症前からウイルスを排出することもあるため、医療機関での検査より早く流行状況を把握できるのです。