2023年に青森県八戸市の病院で発生した殺人事件で、警察は事件を隠ぺいしようとしたとして、当時の院長と主治医の男あわせて2人を逮捕しました。

このため病院は急遽、休診となるなど関係者に衝撃が走っています。

本来、病院が取るべき対応とは現役の医師に取材しました。

みちのく記念病院を長年、兄弟で取り仕切っていた石山隆容疑者(61)と、哲容疑者(60)。2人の逮捕を受けて病院は急きょ休診とし、患者らに衝撃が走りました。

倉島彩能 記者
「病院の家宅捜索が行われた、みちのく記念病院の正面入り口。本日外来休診と書かれた紙がはってあります」

病院を訪れた人は
「“墓場病院”と言われていて、最後の砦。どこにも行けない人が見てもらうところ」

石山哲容疑者の診察を受けた人は
「薬3週間分だったよねと言われて、そうです3週間分と言って別れた。ちょっと信じられない。なんで隠そうと、隠蔽しようとしたのか…。正直に言えばいいのに」

発端は、2年前に病院で起きた凄惨な殺人事件でした。病棟の室内で顔が血だらけになった患者を看護師が見つけ、病室にいた男に問いただします。

看護師
「何でこうなったの?」


「歯ブラシで滅茶苦茶に刺した」

患者の男は、同じ部屋にいた患者の男性の顔の付近を歯ブラシの柄で突き刺すなどして殺害し、男は裁判で懲役17年の実刑判決が確定しました。

倉島彩能 記者
「捜査員たちが病院に入っていきます」

この事件、警察の捜査や遺族の話しから病院の対応が問題となっていました。

3月12日の午後10時45分ごろ~午後11時45分ごろまでの間に事件が発生。

翌日13日の午前10時10分ごろ医師が死亡を確認しました。

その事実が警察へ伝えられたのは午後6時18分。

病院が組織として連絡したのではなく、内部の関係者が通報しました。

事件発生から20時間、男性の死亡から8時間が経過していました。

こちらは病院が作成し、遺族に渡した男性の死亡診断書です。死因を見ると「肺炎」、発病から死亡までの期間は1日間とあり、病死と伝えていました。しかし、男性の実際の死因は頭部・顔面の損傷に伴う失血によるものでした。

死亡の状況や経緯を聞いていた遺族は病院への不信感を募らせました。

遺族(23年の取材に対して)
「なぜ、こういうことをしたのか知りたい」
「殺害した男よりも病院に腹が立っている」

現役の医師は「みちのく記念病院」の対応について疑問を呈します。

在宅医療を手掛ける 和泉武彦 医師
「病院で異常な遺体が認められたら、必ずそれが事件性があるかないかの判断は医者には分かりませんので、警察にまず連絡します。分からない時は、必ず医者は警察に連絡をします」

「事件がもしあるとすれば、初動捜査が重要になると思うので、遅れると事件捜査に支障が出ると思われますから、できるだけ速やかに警察に連絡をするというのが一般的な医師の在り方」

犯人を知っているにも関わらず、事件の発覚を免れようとしたという石山容疑者ら2人。

元警視庁刑事 吉川祐二さん
「(犯人隠避容疑は)警察の捜査に支障をきたすような、弊害を起こすこと。虚偽の供述、病名を出して警察の捜査を遅らせている。警察の捜査を遅らせるということも犯人隠避の要件の1つ」

捜査関係者は、“悪質な事件”と指摘しています。
今後は、逮捕した2人から発覚を免れようとした経緯や動機を調べることにしています。