土佐の三大祭りともいわれる秋葉まつりが11日最終日を迎えました。小さな山里の集落は笑顔や歓声、涙に包まれ、脈々と受け継がれてきた伝統が今年も未来へと繋がれました。
高知県仁淀川町・別枝(べっし)地区で行われた秋葉まつり。
この地区で230年以上受け継がれてきた伝統の祭りです。
ここ数年少子高齢化や新型コロナの影響で何度も祭りの存続が危ぶまれましたが、多くの人が協力し合い今年も無事、開催することができました。
▼秋葉神社祭礼練り保存会片岡和彦(かたおか・かずひこ)会長
「やっときょうを迎えられたというのは感慨深いですよね、うれしいです。まぁみんなの力ですよ、ほんとに、関わってくれる人ほんとにみんながこの祭りを、組織を途絶えさせてはいかんぞとみんなが思ってるんよね。みんながこの日を迎えて、そして終えて、よかったねと思ってもらえるような祭りになったらいいよね」
▼仁淀川町内から
「楽しみですね。(自分も)小学校1年生からやっていたのでまた子どもにも踊ってもらえるように頑張ってほしいですね」
スタート地点の岩屋(いわや)神社から神輿が出発。前の日に町内の秋葉神社から市川家(いちかわけ)の建物に移動してきている神様を迎えにいきます。
秋葉まつりは沢渡(さわたり)、霧之窪(きりのくぼ)、本村(ほんむら)3つの地区の奉納組(ほうのうぐみ)らが神輿といっしょにおよそ3キロの山道を1日かけて練り歩き、神様を秋葉神社へ戻す流れです。
市川家では子どもたちが真剣を使った”太刀踊り“を披露します。別枝地区には子どもが一人もいないため町内のほかの地区や高知市などからやってきているといいます。
1月上旬から練習を重ねてきた子どもたち。立派な踊りに観客から拍手があがります。
祭りでは高さ1.5メートル、重さおよそ300キロの神輿を担ぎ手が力強く揺さぶって祭りを盛り上げます。
担ぎ手の息が上がる中家族の声援が力になります。
この後、およそ200人の行列は大石家へと向かいます。道中には、「秋葉まつりの専門書」を買って勉強したというほど祭りを楽しみに高松からやってきた夫婦の姿が。
▼高松から秋葉まつりのために来た夫婦
「もう楽しかった。朝早くから来たからもうだいぶくたくた…」
Qまだ半分くらいありますが行けそうですか?
「うーん多分!」
多くの県外客が訪れ盛り上がりを見せる秋葉まつり。最大の見どころのひとつが鳥毛ひねりです。
長さ7メートルあまり、重さおよそ5キロの毛やりを10~15メートル離れた2人が投げ合う様は、迫力満点です。
霧之窪組の今年の鳥毛役片岡太星(かたおか・たいせい)さんです。
大学で4年間県外に出ましたが、鳥毛役をやりたいという思いから高知での就職を決めたほど鳥毛ひねり愛があります。
祭りの2週間前。真剣な表情で鳥毛の練習に励むのは、片岡さんとペアを組む掛水貴大(かけみず・たかひろ)さんです。
世代交代のため掛水さんは今回が最後の鳥毛役になるかもしれないということで二人はより熱を入れて練習に取り組んできました。
本番にかける思いはひとしおです。
▼片岡太星(かたおか・たいせい)さん
「なくてはならないペアなので最後までやり切りたいと思います」
▼掛水貴大(かけみず・たかひろ)さん
「互いに鼓舞して高め合ってきたので僕にとっても片岡以外とはやりたくないくらいの感じですね」
祭りで忘れてはならないのが”油売り“。“サイハラ”と呼ばれる防火や災難除けのお守りを“授与”しながら、コミカルなトークで見物客を魅了します。
午前8時半に神輿が出発してからおよそ6時間、祭りもいよいよ終盤です。神輿が秋葉神社に到着すると祭りのフィナーレを見ようと多くの人が集まっていました。
神様をのせた神輿。本殿に入ると思いきや…
祭りを楽しんだ神様が「まだ本殿に帰りたくない」と言っているとして、宮司らが神輿の行く手を阻みます。
奉納が無事終わると会場はたくさんの笑顔と拍手に包まれました。
およそ6時間神輿を担いだ担ぎ手は達成感でいっぱいのようです。
▼担ぎ手の男性
「やり切りました!」
そして片岡さんたちの鳥毛ひねりもついに最後の演舞です。
掛水さんからの最後の鳥毛を体いっぱい使ってキャッチした片岡さん。お互いの信頼の大きさが鳥毛ひねりを通じて形になりました。
▼掛水さん
「彼とじゃないとできんと思いますね」
(Q.目には涙が浮かべられてますがこの言葉をきいていかがですか?)
▼片岡さん
「小さい頃から憧れの秋葉まつりでこの主役の役が先輩がペアでよかったなと心から思う」
伝統の秋葉まつり。その魅力は230年経った今も変わらず見物客に伝わっています。
▼見物客
「ずーと見ていきたいですね。ちょっと涙が出てくる。よかったです。また毎年来たいです」
「もう何年も来ゆうがですけどやっぱり秋葉まつりはいいですね。人がいっぱい来てもろうて楽しかったです。子どもも孫も踊りますのでこれからもずっと続けていくつもりです」
少子高齢化による担い手不足などまだまだ課題がある秋葉まつりですが、今年も祭りを開催できたことが関係者にとって大きな意味があります。
▼秋葉神社祭礼練り保存会片岡和彦(かたおか・かずひこ)会長
「課題の解決の見通しは見えていない、でも今年度お祭りを再興して終えることができた、それはほんとに支えてくれた関係者みなさんほんとに感謝をしています。これで次に繋げる、繋がる、そう思っています」
11日秋葉まつりを見に来た人はおよそ5000人。多かった時期の8000人には届きませんでしたが、230年以上紡がれてきた伝統は、今年も確かにそれぞれの思いによって未来へとつながりました。