あさって28日の日曜日、パリ五輪女子マラソン代表をかけた大阪国際女子マラソンが行われます。

昨年10月、一発勝負の選考会・マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で1位と2位になった鈴木選手と一山選手の2人は、代表に内定。最後の1人はあさっての大阪国際か、3月の名古屋ウィメンズマラソンで設定記録を突破し、なおかつ最も速い記録の選手が選ばれます。

この狭き門に挑むのが、前回の東京五輪代表で、天満屋の前田穂南選手。設定記録は自己ベストを上回っていますが、五輪出場に強い決意を抱いています。

ー走り続けている理由は?

(前田穂南選手)「まずは走ることが一番好き」

ー寝たり遊んだりとかよりも?

(前田穂南選手)
「あ、それも好きです(笑)」

今月(1月)23日、大一番を前に笑顔を垣間見せた前田穂南選手。しかし、この3か月前…。人目もはばからず大粒の涙を流しました。

(前田穂南選手)
「日本代表内定がとりたいと思っています」

上位2人がマラソン日本代表に内定する一発勝負。MGCの号砲が鳴らされました。

(号砲)「パン」

「十分な練習が積めた」と自信を持って挑んだレース。前田選手は先頭に立ち序盤からレースを引っ張ります。ところが、次第に強くなっていく雨。

(前田穂南選手)
「雨で結構身体が冷えたり、筋肉が固まって動かなくなった」

中盤、後続選手のペースアップにのまれ結果は7位。パリへの切符をつかむことはできませんでした。

(前田穂南選手)
「マラソンは何が起こるかわからない、という難しさを感じました」

自信があった大舞台での不完全燃焼。応援に駆け付けた母の麻理さんを見つけると、悔しさがあふれました。

(母 麻理さん)「頑張る?」
(前田穂南選手)「うん」

(母 麻理さん)「次、頑張るそうです」

前田選手には、どうしてもパリ五輪をあきらめられない理由があります。選考会のMGCで優勝し、鳴り物入りで東京五輪の内定を決めました。さらに延期となった1年間、自らを追い込んだものの結果は33位。惨敗でした。

(前田穂南選手)
「自分の力が出し切れなかった悔しい気持ち」

大会直後に右足が疲労骨折。1年7か月もの間、マラソンから遠ざかっていましたがオリンピックでの悔しさは消えませんでした。

(前田穂南選手)「また五輪に出て自分の走りで世界と戦いたい。五輪は昔は目指す場所だった」

ー今は?
「今は違います。力を作ってスタートラインに立たないといけない」

高校時代は控えの選手だった前田選手。

人一倍練習を積み重ねることで、オリンピアンまで上り詰めました。

復帰から1年足らず、MGCでの涙の後、アメリカでの高地合宿を決め40キロ走などの練習を積んできた前田選手。大阪国際まで3か月の強行軍でした。

選考基準となる設定記録は2時間21分41秒。自己ベストを超える厳しいタイムです。

(武冨豊監督)
「これまでの中でも1番良い練習ができている。その記録も達成可能かなと」

大会5日前。大一番を前に前田選手は笑顔を見せました。

ー大阪国際での目標を教えてください

(天満屋・前田穂南選手)「秘密です」

「ひと言だけ…もう少しだけ…」

(前田穂南選手)「アレです」

「アレ」を絶対に掴み取る。五輪への強い思いを胸に。浪速路を駆け抜けます。

【スタジオ解説】
ーいよいよあさって(28日)に迫った大阪国際女子マラソン。前田選手と最後の椅子を争う注目選手の1人が松田瑞生選手です。自己ベストは設定記録を上回る2時間20分台で優勝の有力候補です。また松田選手に続く自己ベストを持つのが、ブダペスト世界陸上代表の佐藤早也伽選手。

天満屋からは松下菜摘選手と大東優奈選手も出場し自己ベストを目指します。強力なライバルを前に前田選手は一体どんなレースを見せるのか。注目の号砲は28日午後0時15分です。