中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題をめぐり、金融庁は25日、損保ジャパンと親会社のSOMPOホールディングスに対し、保険業法に基づく処分として業務改善命令を出しました。

保険金不正請求問題をめぐり、損保ジャパンはビッグモーターの不正の可能性を把握しながら、大手損保3社の中で唯一、取り引きを再開していました。また、車の「損害査定」で調査員による査定を省略した仕組みを導入し、ビッグモーターの“言い値”で保険金の支払いが決まりかねない仕組みとなっていたことがわかっています。

この問題で金融庁は、▼去年9月から損保ジャパンに、▼11月から親会社のSOMPOホールディングスに立ち入り検査を実施しました。

その結果、金融庁は損保ジャパンのビッグモーターに対する管理態勢に不備があった実態が、「不正行為を引き起こす土壌を生じさせるとともに、結果としてビッグモーター社の不正請求を助長し、顧客被害の拡大につながった」と厳しく指摘しました。大手損保3社の中で、唯一、取り引きを再開したことについても、「顧客保護やコンプライアンスを軽視し、自社の営業成績・利益を優先させた」と批判しています。

また、問題の原因については、損保ジャパンにおいて、顧客よりも自社の利益を優先したり、都合の悪い情報が報告されなかったりする企業文化があると指摘。金融庁はこうした文化は「一朝一夕で作られるものではない」として、「歴代社長を含む経営陣の下で醸成されてきた」と言及し、SOMPOホールディングスの櫻田謙悟グループCEOや、損保ジャパンの白川儀一社長などが作ってきた企業文化に原因があると分析しました。

さらに、親会社のSOMPOホールディングスについては「損保ジャパンに対する経営管理が十分に機能していない実態が認められる」との判断を下しました。金融庁関係者は「経営管理をする立場なのに知らなかったこと自体が問題だ」と話していて、親会社として能動的な実態把握をしていなかった点を問題視しました。

業務改善命令では、両社に対し、▼経営責任の明確化のほか、▼コンプライアンスや顧客保護を重視する組織風土の醸成などについて改善計画を策定し、3月15日までに提出することを求めています。

鈴木俊一 金融担当大臣
「親会社である損保ホールディングスによる子会社の経営管理が十分に機能せず、損害保険ジャパンにおいて、保険金不正請求に対する一連の対応に重大な問題がみられたことは大変遺憾であります」

鈴木大臣はこのように述べ、ビッグモーターをめぐる一連の問題について、「損害保険業界全体の信頼をも失墜させかねない極めて重大かつ影響の大きな事案と認識している」と話しました。

一連の問題を受け、すでに損保ジャパンの白川社長は辞任を表明しているほか、SOMPOホールディングスの櫻田グループCEOは退任することを26日の会見で表明する見通しです。