2022年7月10日に実施された参議院選挙の期間中にそれぞれの候補者や政党の主張を伝える「政見放送」がテレビやラジオで実施されました。政見放送は公職選挙法で「そのまま放送しなければならない」と定められていますが、最近の選挙では放送すべきか考えてしまう内容のものも見られます。なぜ、そうしたことが起きているのかRKBの調査報道グループ「R調査班」が背景を取材しました。
(2022年の記事を再掲)

◆政見放送で実名あげ「もめ事で暴行受けた」

2022年6月30日にRKBで放送された政見放送を録画し、音声を一部処理したものです。
「実は少し揉め事があって暴行を受けてしまっていたんですけどその時実際に暴行した人は”●●”という●●の社員ですがその人が暴行した事を認めていません」

実際には伏せ字で示した部分の実名が放送されました。今回で3度目の国政選挙出馬となったNHK党の熊丸英治氏は、政見放送で自身が被害者だと主張するトラブルについて、実在する個人名を挙げて語りそのまま放送されました。

公職選挙法は、政見放送を実施する放送局に対して「そのまま放送しなければならない」と定めているためです。

◆名指しされた会社員は否定、熊丸氏「ウソ」

NHK党・熊丸氏:
Q公職選挙法では、政見放送で名誉を傷つけ品位を損なう言動をしてはならないとなっています
「いや、それは該当していないです。向こうがウソついているので」

◆法の想定外か・・・選管“関与できない”

福岡県選挙区についての政見放送を管理運営する立場の福岡県選挙管理委員会は、この放送について議論した結果「政見放送を事前に審査して指導することは憲法上の検閲にあたりかねない」として「内容に関与することはできない」との見解を示しています。


選挙管理委員会・藤井委員長「立候補した人がどのような訴えを選挙民にしていくかは本来自由でなければいけない。個人レベルの批判まで規制するというのはできないのかなぁと思っています」

こうした状況に問題はないのでしょうか。九州大学法学部の南野教授は公職選挙法の限界を指摘します。


南野森教授「一般の民間人を政見放送の中で悪口を言うとか名誉を棄損するとか、事実に反することを言うとか、よもやそんな人が政見放送でいると想定されていなかったので、法が想定していないんですね。政見放送そのものあり方について公職選挙法のそのものあり方について国会で議論をして見直す必要があるのではないか」