20日に開催された「日本陸連 アスレティックス・アワード2023」で「アスリート・オブ・イヤー」に輝いた世界陸上ブダペスト女子やり投・金メダリストの北口榛花(25 きたぐち・はるか、JAL)に充実の一年を振り返って貰った。授賞式で披露した当日の黒いノースリーブのパンツスタイルに笑顔を覗かせながら、今後の抱負も語った。世界陸上金メダル獲得で、陸上では第1号となるパリ五輪の切符を手にしている。
本当に魔法にかかっているような2年間
Q.どんな一年だったか
北口榛花:
去年から本当に魔法にかかっているようなそんな2年間を過ごしているのでもういつ…魔法が切れちゃうかドキドキしてるんですけど。でもいい年が続いて良かったなと思ってます。

Q.投げる女子用のやりは約600g、どんな感覚なのか
北口:
売っているペットボトルのドリンクと同じぐらいの重さなんですけど、実際にはやりの方が多分軽く感じると思います。(軽くて長いので)風の影響をすごく受けやすかったりとか、まっすぐ投げるのが難しかったりします。
世界一の実感
2023年8月の世界陸上ブダペスト金メダルに続き、ダイヤモンドリーグの年間チャンピオンを決めるファイナルでも日本勢初の優勝。世界のビッグタイトル2冠を手にした北口選手が帰国の際に手渡されたのはシェケラックコーチが食べて話題になったハイチュウ。サプライズプレゼントにトレードマークの笑顔が弾けた。

Q.世界一を実感したのはいつだったか
北口:
試合をした後も日本に帰って来れなかったので日本の反響を肌で感じてなかったんですけど
ブダペスト、チェコから近くてチェコでいつもお世話してくれてるコーチの家族だったり、あと友達だったり、いろんな人が現地に駆けつけてくれて、日本の私の両親もそうですけど、みんなが喜んでくれた、というのが一番うれしかったかなというふうに思います。
Q.世界一の瞬間。とにかく試合で6投目、最後の投てきがものすごく強いのは
北口:
もう、思いっきり振り切れるというか、何でもいいやと思える。とにかく思いっきり投げようって切り替えられるんだと思います。
世界舞台で戦う意識
世界陸上金メダル獲得の舞台裏で、大会後に北口選手が投稿したSNSが話題となった。試合当日の用具チェックで日本人選手の二人が引っ掛かり、スパイクのピンをかえなければいけないという事態に。スパイクのピンは規定に合ったものであったにも関わらず、ピットを傷めるということで突然指示されたという。北口選手は同じピンだったが変えさせられなかった。オフィシャルでも違うと思ったらノーと、その場で抗議しなくてはならないと感じました、という事を投稿した。

Q.SNS投稿した動機は
北口:
まず自分は海外にいることが多いので海外の選手はオフィシャルに言って、だめと言われても、“納得いかなかったら必ずSNSでも抗議文を出す”んですよね。そういうのを見てて、今回、日本人選手がそういうことになったにもかかわらず、詳細をあまり表に出さなくて、また、このあと世界大会ももちろん続きますし、また若い世代が初めて世界大会に出るっていうふうになったときにこの経験をまた日本人が繰り返すっていうのはどうかなっていうふうに思いました。ただピンを変えられました、悔しかったですで終わっちゃうのも、なんか違うなっていうのを私は当事者ではないんですけど、今後の日本チームがより世界の大会に出て活躍するためにその情報が必要になると思ったので発信させていただきました。

Q.この一年で気になった事はウエイトトレーニングをしたくなかったというのは?
北口:
一時期、自分の体の硬さが気になっていて、私の投てきの武器というのが体の大きさを使って投げる事とあとはしなやかさだったんですけど、その両方がウエイトの重さに自分の体が、その負荷に耐えられなかったというのを伝えた。しかし、なかなかうまく伝わらなかったり、言葉も違うので伝わらなかったりするので、そこでなんか自分の思いが伝わってないって感じた時が結構、悔しかったですし、(ウエイトトレーニングを避けてると思われて)なんでなんだって思っていました。
チェコ武者修行の決意
Q.2019年から一人で日本を飛び出しチェコで武者修行する行動力の源泉とは
北口:
本物を見なきゃいけないなというのがあった。やり投げの本場は日本じゃなくてヨーロッパなので、本場で学ぶことだったり、世界一遠くに投げた人のノウハウを学ぶことが
自分が一番遠くに投げられるようになる近道だと思った。自分から…普段はこんなに行動できないんですけど、自分で得たものしか納得出来ないなっていうのもあったので、自分で動けるようになりました。

Q.楽しかった事は
北口:
母と一緒に散歩したことです。両親ともなかなか会えないんですけど、海外に来てくれたりしたときは一緒にいろんな所、散歩したり出来るように試合前の時間とかリラックスするために散策するようにしています。
笑顔の教え
Q.はじける笑顔も母親からの教えだったと…
北口:
そうです。母がいつも笑顔でいれば幸せも一緒にやってくると思うからつらくても笑顔を心掛けるようにって言ってくれたので、出来るだけ楽しいことを考えて、つらくても楽しく考えられるように心掛けてます。

Q. 2024年パリ五輪、2025年には東京で世界陸上がある
北口:
まずパリのオリンピックは今回、世界陸上で金メダルを取りましたけど、世界選手権の金メダルとオリンピックの金メダルはまた別物なので4年に1度のオリンピックというアスリートにとって特別な舞台でしっかり結果を出せるように準備して臨みたいなっていうふうに思います。その次の年、東京で世界陸上があるので次は日本でお世話になった方々の目の前でいいパフォーマンスが出来たらいいなと思う。
■北口榛花(きたぐち・はるか)1998年03月16日生まれ
北海道出身 旭川東高~日本大学~JAL
2019年からチェコへ単身武者修行へ、デービッド・シェケラック氏より本格的にコーチを受ける。2019世界陸上ドーハ出場。東京オリンピック(2021年)では57年ぶりの決勝進出。2022世界陸上オレゴンで最終6投目で投てき種目日本女子初のメダルとなる銅メダル。今年の世界陸上ブダペストでは最終6投目に66m73のビッグスローで大逆転し、フィールド種目では日本女子初の金メダルを獲得した。今季ダイヤモンドリーグでは3度の優勝、ダイヤモンドリーグ・ファイナルでは日本人初の優勝を果たした。パリ五輪代表内定。息抜きはK-POPと料理系Youtube鑑賞。