インドにあるチベット亡命政府のペンパ・ツェリン首相はJNNの単独インタビューに応じ、中国政府のチベット政策や、88歳になったダライ・ラマ14世の後継問題について語りました。

チベット亡命政府 ペンパ・ツェリン首相

Q.習近平国家主席が3期目入りしましたが、今の中国をどう見ていますか?

ツェリン首相:
中国共産党の指導者たちが何を考えているのか、私にはわかりません。しかし、我々の側から見ると、中国政府が今やっていることは、インドに対しても、尖閣諸島をめぐり日本に対しても、台湾に対しても、南シナ海をめぐる「新しい地図」の問題でも、中国の好戦的な態度のせいで、この地域の雰囲気は悪化しているし、多くのリソースを軍事に費やす羽目になっています。日本は第二次世界大戦後、平和的態度で専守防衛に徹していましたよね。しかし先日日本で講演した際、一人の子どもが私にこう質問したんです。「どうやって国を守ればいいのですか?」と。私は「どうしてこのような質問が、こんな幼い日本の少年の心に浮かぶのだろうか」と思ったのです。そして、本当の脅威は誰なのか、それはどこから来るのか、ということなのです。

今、中国やロシアで起きていることのせいで、日本はウクライナやこの地域の安全保障に対してより強い立場を取ることを選び、多くの防衛費を計上することを余儀なくされています。正しい方向ではないにせよ、選択の余地がないのです。台湾はもっとです。オーストラリアも、インドも多くの予算を軍事に費やしていいます。これらすべては中国の行動のために起こっていることです。今、中国はゼロコロナ政策、ビジネスの不振、景気の後退、若者の失業率が上昇して、データの公表を取りやめるなどの問題が起きています。私は、中国は今、非常に不安定な状態にあると考えています。中国が強大になったのは経済と貿易のおかげです。中国が経済的に強大になることに反対する人はいませんが、それが国際社会に明らかな危険をもたらすのであれば、国際社会は、ほかの国々が苦しまないようにするための措置を講じなければならないでしょう。

Q.中国政府は信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる「宗教の中国化」政策を推進していますが、この政策についてどう思いますか?

ツェリン首相:
宗教だけではありません。中国政府はチベットの人々のアイデンティティーそのものを変えようとしています。特にチベットにはチベット仏教があり、その基礎となるチベット語があります。チベット語はチベット人のアイデンティティーの基盤なのです。そしてその上にチベット仏教文化があり、他の仏教国と同じように、私たちはブッダの平和と非暴力のメッセージに従っています。

しかし残念なことに、今、習近平国家主席一人の手にすべての権力が握られている。ある人が私のところに来て、「習近平は慈悲深い指導者になりたがっている」と言いました。もし彼が中国と国際社会を正しい方向に導くことができれば、ノーベル平和賞への道が開けるでしょう。しかし、もし彼が中国を間違った方向に導こうとするなら、中国国民全体にとって非常に破滅的な結果をもたらすでしょう。そこにはチベット人、ウイグル人、モンゴル人、香港人も含まれています。中国は海外からの投資を必要としていますが、他国から干渉されることを望んでいません。そして、すべてがますます統制されてきています。それは良い兆候ではありません。私は中国の指導者がもっと良識的な対応をすることを期待しています。

Q.「宗教の中国化」はチベットの人々に何をもたらすのでしょう?

ツェリン首相:
チベット国内の状況について、国連は「100万人の子どもたちが寄宿学校に入れられた」という報告書を発表しました。ジャーナリストが中国の指導者や報道官にこのことを尋ねると、彼らは「アメリカは先住民族をどう扱ったか」などと発言し、論点をすり替えようとしています。これが中国が、チベットやウイグル、モンゴルで、国家ぐるみで大規模にやっていることです。つまり、チベットに住む6歳から18歳までの100万人を寄宿学校に入れているのです。中国式の教育を受けることで彼らは家に帰ってもチベット語が話せなくなってしまいます。中国が行っている教育システムが人々の心や考え方、生き方、すべてを変えることを目的としているのであれば、それは文化的ジェノサイドに等しいと思います。中国政府の愛国教育の目的は、誰もが中国語しか話せない、中国人的思考を持つ人を育成することです。

宗教の自由について言えば、かつて、すべての寺に多くの僧侶がいましたが、今は少なくなっています。中国はすべてを管理したがっています。特に中国はチベット仏教の高僧の「生まれ変わり」を管理したがっている。

特に、今のダライ・ラマの14世の「生まれ変わり」、ダライ・ラマ15世を支配することを目的としているのです。彼らは今のダライ・ラマ14世については気にしていませんが、ダライ・ラマ15世に関心を寄せています。

中国のシステムは、経済発展をもたらすことを証明しました。しかし残念ながら、中国の指導者たちが理解できなかったのは、民衆の願望は他にもあるということなのです。彼らは経済発展すれば問題は解決すると思っている。彼らは人々の心の自由や、人々が何を望んでいるのかを考えていない。お金を手に入れたら、次は何をするのですか?お金があっても、死に向かう歩みを止めることはできない。死後の世界が本当にあるのかないのか、精神世界は存在するのか。中国人は心の中で常にこのような葛藤を抱えていますが、中国の共産主義はこのような問題に対する答えを出すことはできず、嘘で塗り固めることしかできていない。