「障がいに関係なく好きなことができる社会に」車いすのかっこよさを追求

中嶋氏は障がい者に対するイメージを変えたいと、さまざまなことに取り組んでいる。例えば徳島にあるカフェを月に一度訪れ、店員として接客や調理を担当。さらに今年から大阪でバーの店員にも挑戦。その場では車いす利用者もそうでない人も全員が車いすに座って過ごし、グラスを片手に楽しむことができるそうだ。

中嶋涼子氏:
3か月に1回、大阪で立たない立ち飲みバルっていうのをやっています。バーのママが5人いるんですけど、みんな車いす女子なんです。立たないから、お客さんも同じ目線になってほしいなと思って、お客さんもみんな車いすに乗ってもらって、車いすでみんなが混み合った状態でお酒を飲んだり、ご飯を食べたりしてしゃべるんです。みんな車いすだから、本当に車いすの人なのか、歩いているかもわからないまま会話が始まるので、固定概念がないんです。イメージなくしゃべっていて、帰るとき急に立ち上がって帰った人は「立てるんだ!」とか、そのまま帰って「車いすだったんだ」と。障がいの有無に関係なく、みんなが同じ目線で楽しめるバーのママをやっています。

9歳の自分に「バーのママができるよ」ってすごく言いたいです。もう何もできないと思っていたのに、接客までしている今がすごく楽しくて。そういう場所が増えたら、みんながもっといろんな場所で活躍できるんじゃないか、障がいに関係なく好きなことができる社会になったらいいなと思って。

中嶋氏は誰もが挑戦できる社会の実現に向け、自ら障がい者の可能性を広げる発信を続けている。2021年に開催された東京パラリンピックの閉会式に出演した経験は中嶋氏の人生観に大きな影響を与えたという。

――パラリンピックへの出演はどうでしたか。

中嶋涼子氏:
障害とか関係なくいろんな人が同じ目標に向かって頑張ったんですよ。毎日すごく練習して、どうやったらかっこよく見せられるかとか。本番でみんなで一丸となってかっこよくパフォーマンスできた気がして、私は初めてそのときに車いすでよかった、車いすをかっこよく見せられたと思って。かっこよくできた自分がいて、楽しめていたんですよ。それは多分みんなが楽しめていたからそう思えたんだと思うんですけど、そういう場所が日本中に広まったら、みんなが自分の障がいとか人と違うことと関係なく楽しめる社会になるんじゃないかなと思って、パラリンピック閉会式の雰囲気を忘れずに日本中に伝えていきたいってずっと思っています。

――普段自分をかっこよくしようと意識していますか。

中嶋涼子氏:
小中高ずっと自分だけ車いすに乗っていて、車いすの自分がかっこ悪いっていう勝手なコンプレックスがずっとあったからこそ、かっこよく見せたいっていう気持ちがあって。私は安室奈美恵さんが大好きなんですけど、ああいうかっこいい女性になりたいと思って、真似してブーツをはいたら足がちょっと長く見えて。私は9歳から車いすだから9歳から成長していないんです。145センチで、9歳にしては大きかったんですけど、今も145センチで足も短くて、歩いていないからすごく細いんですよ。それを隠すためにブーツをはいたら意外とかわいく見えて。かっこよくすることを追求して、車いすイコールかっこいいみたいに思われたいっていうのが結構あります。

――かっこいいです。

中嶋涼子氏:
いつか眼鏡みたいになったらいいなと思って。今の人って眼鏡をわざとしたりするじゃないですか。それぐらいになったらいいなと。「車いすに乗ってみる」みたいな。こんなに楽しめるとも昔は思っていなくて、病院の車いすのイメージがあったんですけど、車いすユーザーさんはみんな、デコレーションしたりして楽しんでいるので、そういうイメージをもっと伝えて、おしゃれなアイテムぐらいに思ってもらえたらある日突然車いすに乗ることになっても、そんなに落ち込まないんじゃないかと。

――「わたしのサステナ・ライフ」ということで、ずっと続けたいと思う趣味や日課を教えてください。

中嶋涼子氏:
けん玉です。ちょっと昭和感があるんですけど、けん玉が大好きで小学校の頃からずっとやっていて、車いすになってからもずっと続けています。

――中嶋さんにとって、けん玉はどういう存在ですか。

中嶋涼子氏:
歩いていた頃からなので、初心に帰れるというか、子どもの頃にも戻れるし、子どもたちとのコミュニケーションツールにもなるので、自分の一部ですね。もうけん玉なしでは誰にも会えないっていう。

――けん玉でどんな方ともコミュニケーションできる?

中嶋涼子氏:
そうなんですよ。子どもたちと本当に仲良くなれて、車いすよりもこっちで仲良くなれるという感じです。外国の人とも結構盛り上がるので。わかりやすいのでバリアフリーな遊びだなと思います。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2023年11月26日放送より)