駅のホームから人が線路に転落する事故が後を絶ちません。中でも危険な状況に陥りやすいのは視覚に障害がある人です。事故を未然に防ごうと、音や振動で危険を知らせる装置の開発を岡山大学が進めています。実用化に向けた実証実験がJR岡山駅で行われました。

視覚に障害がある女性…。駅のホームの黄色い線を越えそうになりますが…イヤホン越しに聞こえて来た音に反応し、立ち止まります。

(ピピピピピ)

音を出していたのは携えていたこの装置です。

(佐藤大祐記者)「こちらの装置、マットに近づけると…音のピッチが早くなり、危険を知らせてくれます」

視覚障害者が駅のホームから線路に転落するのを防ごうという装置の試作品です。岡山大学が駅のホームで多発する視覚障害者の転落事故を減らそうと開発しました。国土交通省やJRによりますと、事故は昨年度、全国で52件起きていて、岡山県内でもことし10月に1件発生しています。これまで全国の駅には対策として転落を防止するホームドアなどが設置されてきましたが、導入コストが高いこともあり設置率は全体の1割ほどに留まっていました。対策のハードルを下げるため、低コストの装置を考案したのです。

(岡山大学工学部 岡安光博教授)「すべての駅にホームドアをつけていただければいいんですけれども、予算的には不可能だと思う。低コスト・容易さ、その辺を意識すると我々が今まで作ってきたものがよいのでは」

岡山大学はその実用化に向けて視覚障害者4人を招き実証実験を行いました。現段階の試作品を実際に使ってもらうことで改善点を探ろうという狙いです。参加者は電車がすぐそばを走っていても装置の警告音が聞こえるかなど、機能をチェックしていきました。また、安全性を高めるためにあわせて使ってもらおうとしている杖の実証実験も同時に行いました。杖はホームの外にはみ出るなどすると振動する仕組みになっていて、参加者がそれぞれ、使い心地を確かめていました。

(参加した女性)「イヤホンの方はよく聞こえて、良かったなと思うんですが、白杖の方はちょっと振動が分かりにくかったので、これからますますいいものになってぜひ実用化されたらいいなと思います」

(参加した男性)「いつもぼくらは危険と隣り合わせっていう気持ちはあるんで、正直ホームにいる時も転落しないように真ん中から離れないようにしています。安心して外出するためのいい道具ができたらいいと期待しています」

(岡山大学工学部 岡安光博教授)「関係する多くの方に賛同いただけるようなものを開発しなければいけないかなと思っておりますし、そうなるように努力している」

視覚障害者が安心して駅を利用できるように…。岡山大学では早ければ2年後の実用化を目指したいとしています。