パレスチナ自治区ガザの病院周辺に対するイスラエル軍の攻撃の影響で、乳児を含む犠牲者が出ています。一方、そのガザに戻れないパレスチナ人の父親は「死が待っていても帰りたい」と訴えています。

パレスチナ自治区ガザにある病院周辺で続く、イスラエル軍の攻撃。中東メディアによると、20か所あまりの病院が燃料と電力不足などで機能停止状態となり、最大規模のシファ病院では13日までの3日間で乳児3人を含む、32人が死亡したということです。

こうした事態について、アメリカのバイデン大統領は…

アメリカ バイデン大統領
「私が望み、期待しているのは、病院に関する攻撃が減ることです。病院は守られなければならない」

「病院は守られなければならない」

サリバン大統領補佐官によると、大統領のこの考えは直接イスラエル政府に伝えられ、イスラエル側からは、▼病院に燃料を提供する用意があることや、▼転院を余儀なくされる患者に安全な移動ルートを確保する方針が示されたということです。

イスラエル軍による攻撃は広い範囲で続き、ガザ地区での死者はこれまでに1万1240人。イスラエル側の死者の10倍に近づいています。

そうした状況を、誰よりも不安な気持ちで見ているのがマハムド・サダーラさん34歳。

サダーラさん
「毎日想像してしまいます。家族が亡くなったという連絡があるのではないかと」

ガザ北部に家族5人で暮らしていましたが、仕事でイスラエル南部にいた時に戦闘が始まり、それ以来、戻れていません。

戦闘開始の直後に送られてきたという子どもたちの動画。通信状態が悪いため、サダーラさんに届いた動画はこれが最後です。

数日に1回、電話がつながった時には子どもたちに、こう話すのだと教えてくれました。

サダーラさん
「数日で帰宅すると話しています。空爆は遠いので怖がらないで、と安心させるために」

「希望を与えることしかできない」 優しく、悲しい“ウソ”です。

スマートフォンで変わり果てたガザの街並みや、通りに並べられた遺体の数々を毎日、目にするというサダーラさん。「我が子がいないだろうか」と心の中が恐怖で埋め尽くされます。

サダーラさん
「この瞬間にでも帰りたい。死が待っていようとも、子どもたちとなら死んでもいい。離れている間に子どもたちが犠牲になる悲しみを味わいたくない」

彼のように今もガザに戻れない人は、8000人ほどいるとみられています。