2023年になって大幅に回復しているインバウンド。日本を訪れた外国人は商品を買う「モノ消費」からサービスなどを体験する「コト消費」へ消費の動向が変わってきているという。外国人旅行者が日本のどのようなところに魅力を感じているのか。コト消費の現場を取材した。
食品サンプルや包丁づくり、スナックはしごから瞑想まで

出来上がったエビの天ぷらを手に取り、大興奮の外国人。東京・合羽橋にある「元祖食品サンプル屋」には連日多くの外国人観光客が訪れている。同店では、以前は食品サンプルの販売だけを行っていたが、体験サービスを始めたところ多くの外国人が訪れるようになった。2023年は既にコロナ前の3倍に達したという。近年、日本の文化や伝統を求める外国人が増加。商品などを購入するモノ消費からサービスなどを体験するコト消費へと大きく変わってきている。

大阪・堺市にある刃物問屋「和田商店」。同店では包丁を作ることができ、外国人観光客の間で人気が高まっている。

和田商店 和田高志専務:
ブランドを広める一つの機会として始めました。(外国人観光客は)コロナ前は大体3割ぐらいだったのですが、コロナが明けてから6割から7割近くが外国の方になっています。

包丁作りに参加したのはケニアから新婚旅行で訪れた夫婦。日本独自の体験を紹介するサイトを利用して同店を訪れた。日本に来る大きな目的の一つが包丁作りだったという。

この道60年の職人からの指導を受けながら、包丁作りがスタート。包丁を研ぎ始めて約1時間後、切れ味鋭い刃が出来上がり、最後に柄をつけたら世界で1本だけの包丁が完成した。
東京・新橋で3人の外国人が向かったコト消費の現場は、夜の新橋駅前。そこにいた外国人は、ドイツ、カナダ、ニュージーランドから来た3人。彼らが向かった先は日本独自のナイトカルチャー、スナック。

彼らは日本のスナックの楽しさを外国人に紹介するサイト「スナック横丁」が運営しているスナックはしごツアーの参加者だ。サラリーマンのお酌の仕方を学んだ外国人一行はお店の常連とも打ち解け、和やかな雰囲気に。2軒目の店では、スナックには欠かせないカラオケを楽しむことに。ツアーで初対面した3人の外国人は、スナックのカラオケで国境をあっという間に越えていった。ドイツから来日した参加者は「とてもリラックスするし、とても親しみやすい雰囲気があるひと時でした」と話した。

スナック横丁 五十嵐真由子代表取締役:
スナックは全国に10万軒あるとも言われています。まずは東京でしっかりこの形を作って、日本の文化であるスナックというものを楽しんでいただきたいなと思っています。

空海が修行の場として開いた高野山。52の寺院が宿坊を営む中で特に多くの外国人観光客が訪れているのが、1200年の歴史を誇る恵光院だ。30ある客室は連日満室で、8割がインバウンド客だという。人気の秘密は、宿坊のスタッフが英語で対応するだけではなく、ほとんどの僧侶が日常会話程度の英会話ができることだ。

宿泊する部屋にも外国人が魅了される理由があった。最も安い部屋は6畳の和室。1泊2食付きで1万7000円からだが、グレードアップすると縁側から庭が眺められる16畳の特別和洋室。宿坊でありながら、スイートルームもある。最高級の部屋は広々としたリビングルームにダブルベッドが二つ置かれたベッドルーム、さらに二つの和室、バス、トイレがついて、広さは100平米。値段は1泊2食付きで14万円からとまさにハイクラスだ。

宿泊者は宿坊ならではの瞑想体験や勤行体験、祈祷なども体験できる。

恵光院 近藤説秀住職:
昔から来ていただいている信者様やリピーターの方もいらっしゃいますので、そういった方のために土曜日とか日本人が多いところは、外国のお客様をちょっと抑えめに予約を取らないようにしたりして対応したりしています。
新たな計画もあるという。
恵光院 近藤説秀住職:
部屋数を減らして部屋の単価を上げていくような戦略でいきたいと思っています。お客様の数は減ってくるのですが、減ることによって1人1人の方とゆっくり接客とか対応できる時間を作って、来た方がお坊さんとかとお話できて楽しかったというような体験をしていただければなと思っています。