岸田総理は10月26日、1人当たり4万円の減税や給付など国民への還元策の検討を与党に指示した。

減税+補助金継続でどっちつかずに?消費税減税は否定

23日、岸田総理は所信表明演説を行い、「供給力の強化」と「国民への還元」の二つを両輪として経済対策を実行すると強調した。26日、岸田総理は政府与党政策懇談会で所得税と住民税の定額減税を行うよう指示した。

減税額は合わせて4万円。住民税が課税されない世帯に対しては、既に給付している3万円に加え、7万円を給付する方向で、2024年6月の実施を目指す。ただ、納税額が少なく、減税の恩恵を十分に受けられない層がいることも課題となっている。

国会では27日から与野党による本格的な論戦が始まった。政府は、物価対策としてガソリン補助金や電気・ガス料金の負担軽減措置を24年4月末まで延長するとしている。所得税より消費税を下げてほしいという声もある中、岸田総理は「社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません」と述べた。

国民への還元を大きく打ち出した今回の経済対策。家計の負担軽減に効果はあるのだろうか。

――物価高に賃金アップが追いついていないので、追いつくまでの間、家計を直接支援しようという考え方か。

BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
そうだと思います。今年の春闘はうまくいきました。来年も上手くいかせたい、いくに違いない。それが出てくるのは1月ぐらい。1月から3月ぐらいまで春闘があって、その後にまた減税があるとなると、国民の感情的にずっとお金が回るのではないかと期待感ができる。そんなことは考えているのかなと思います。

2024年6月に納税者と扶養家族それぞれに1人当たり4万円を定額減税する。住民税非課税世帯には7万円を追加し、合計10万円の給付になる。問題はその間にいる層だ。

住民税も所得税も課税されているが、納税額が年間4万円に満たない人たちは、減税されても4万円には届かないので、そこをどうするのかが制度上難しくなっている。

――働いて税金を納めているが、所得が低いということで、一番支援が必要とも言われている。減税と給付を組み合わせるので非常に事務手続きは煩雑だ。

BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
迅速にできるのかという問いにはつながってしまうのですが、事務方への負担は大きくなると思います。

――何年間かにわたって続けるのであれば、制度として減税がいいが、急いでやるのであれば、スピード感、事務手続き、公平感から、1人4万円給付とした方がいいように思うが。

BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
コロナのときに1人10万円の給付があって、本当に皆に効果があったかどうかはよくわからないのですが、迅速ではありました。今回はこれから先ずっと安定的にお金が回ってくるのだという安心感につながるかどうかがポイントになると思います。

――一番つらいのは食品価格が上がっていることだから、消費税を下げられないのかと思うが、消費税は1回いじるとあとが大変になる。

BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
日本は何でもそうなのですが、1回決めたことをやめるのが下手な国です。補助金なども全部そうなのですが、割とだらだらとやってしまうわけです。(消費税をもとに戻すのを)やれるのだったらいいのですが、できないとすると消費税の減税というのは難しいかなと。

ガソリンの価格は今は補助で抑えているが、2024年4月まで継続して、5月以降は縮小する方向で考えるということだ。

――ガソリンも電気もガスもやめるにやめられなくなっている。

BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
本源的に意味がある政策というのは、本当に必要な人に必要な分、必要な期間、ちゃんとお金が滞りなく行くことなのだと思います。こういうやり方をしてしまうと、ないよりあった方がいいよねとみんな思うわけで、そうするとだらだらとやめられなくなってしまいます。あとは費用対効果だと思います。これを国として果たしてお金を使い続けることができるかという問題と効果がどれくらいあるかという話だと思っています。大盤振る舞いできるような財政状況だったら可能なのだと思いますが、そうではないとすると、どこかで止めていかなければいけないということだと思います。

――本来、直接減税や給付で家計支援に踏み切るのであれば、個別の補助金は全部なくして、まとめてお金を家計にあげるから、必要なところにうまく使ってくださいというのが筋だ。今回は補助金も続けるし、減税もささやかながらやりますと。両方というのは論理破綻だ。

BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
これ(補助金)は基本的には会社に渡しているお金なので、国民はこういう制度、政策があってよかったなとあまり思わないわけです。どちらかというとガソリンスタンドに払うお金はどんどん増えているという印象しか残らないので、まとめて家計にお金を出すということを考えた方が、より経済効果としてはあるかもしれないなと思います。